芦辺拓『大鞠家殺人事件』(東京創元社)★★★★★

昭和18年、大阪・船場の化粧品商《大鞠百薬館》の長男に嫁いだ陸軍軍人の娘・中久世美禰子は夫・多一郎が上海へ出征したことにより、大鞠家の人々と同居することになった。やがて彼女は惨劇に巻き込まれ――。
傑作。
戦時下でしか成立しない物語であるのが素晴らしく、探偵小説の使い方には脱帽。
「好事家のためのノート」にあるように〝《物語》の興味で惹きつける〟物語であり、大作家(読めば分かります)の作品の核となるものを取り込みつつしっかりと芦辺流になっているのは流石です。
(長々と書きたいのだけど、事件の真相に絡んだあれこれに触れざるを得ないので、こんな風にしか書けなかった)

『Web Fairy Paradise』発表作(100)

「WFP作品展」発表作が100に到達。こんなに作るとは思っていなかった……。

第133回WFP作品展 133-2(『WFP』157号)

【協力詰(ばか詰)】双方協力して最短手数で受方玉を詰める。
【Imitator(■またはI)】着手をした時、その着手と同じベクトルだけ動く駒。Imitator が駒を飛び越えたり、駒のある地点に着手したり、盤の外に出たりするような着手は禁止。これは王手の判定にも適用される。
【中立駒(n駒)】どちらの手番でも動かせる駒。横向きの字か横にnを付加して表記する。
[補足]
1)中立駒の動きは現手番の駒としての動きとなる(利きが非対称な駒の場合に要注意)
2)中立駒は現手番の駒として成れる場合のみ、成ることができる
3)中立駒はどちらの手番でも取ることができ、持駒になる。この時、所属は取った側の持駒だが中立性は失わず、再び盤に戻ったときには中立駒として振舞う。
4)中立駒は現手番側の駒を取れない。 相手側の駒や、中立駒は取れる。
5)中立歩による打歩詰は禁止。二歩禁も適用される。手番を問わず、中立駒の歩や通常の歩がある筋に、更に中立駒の歩を打つことはできない。
6)中立駒は行き所ない駒にならない。
7)中立駒でも自玉への王手は反則。自玉への王手となっているかどうかの判定は、現手番が終了し、相手側が着手する前に行う。
【結果】
正解2名(実質正解者1名)
【手順】
4四n角成[I35]、4五n馬[I36]、6三n飛生[I35]、5二玉[I44]、6三n馬[I62]、7二n馬[I71]、6二n飛まで7手。
【コメント】
2016年4月21日完成、2021年5月22日投稿。
WFP132-1の姉妹作(その1)。n飛を取る展開になるのは見えずらいですね……。

『Web Fairy Paradise』発表作(99)

第132回WFP作品展 132-1(『WFP』155号)

【協力詰(ばか詰)】双方協力して最短手数で受方玉を詰める。
【Imitator(■またはI)】着手をした時、その着手と同じベクトルだけ動く駒。Imitator が駒を飛び越えたり、駒のある地点に着手したり、盤の外に出たりするような着手は禁止。これは王手の判定にも適用される。
【中立駒(n駒)】どちらの手番でも動かせる駒。横向きの字か横にnを付加して表記する。
[補足]
1)中立駒の動きは現手番の駒としての動きとなる(利きが非対称な駒の場合に要注意)
2)中立駒は現手番の駒として成れる場合のみ、成ることができる
3)中立駒はどちらの手番でも取ることができ、持駒になる。この時、所属は取った側の持駒だが中立性は失わず、再び盤に戻ったときには中立駒として振舞う。
4)中立駒は現手番側の駒を取れない。 相手側の駒や、中立駒は取れる。
5)中立歩による打歩詰は禁止。二歩禁も適用される。手番を問わず、中立駒の歩や通常の歩がある筋に、更に中立駒の歩を打つことはできない。
6)中立駒は行き所ない駒にならない。
7)中立駒でも自玉への王手は反則。自玉への王手となっているかどうかの判定は、現手番が終了し、相手側が着手する前に行う。
【結果】
正解1名(実質正解者なし
【手順】
4三n角成[I75]、同玉[I74]、6三n飛成[I72]、6二n角、5四n龍[I63]、5二玉[I72]、5一n角成[I61]まで7手。
【コメント】
2016年2月25日完成、2021年4月20日投稿。
WFP81-4と同時期に完成。
「中立駒+Imitatorの作例が増えた今なら大丈夫だろう」と思い発表したのですが……ダメでした(苦笑)。
WFP81-4とU242では攻方が中立駒を取って打ちましたが、本作では受方が中立駒を取って打つ――捨てた駒で詰ます――展開になっています。普通の詰み形なのであまり難しくないと思っていたのですが、そのようなことはなかったようです。

竹本健治選『変格ミステリ傑作選【戦前篇】 』(行舟文庫)★★★★★

漱石・谷崎・芥川・久作・甲賀三郎地味井平造渡辺温浜尾四郎・乱歩・海野・小栗・木々・川端・正史・十蘭による戦前の傑作15編に加え、同時代の中国の短編「真偽の間」(孫了紅)を収録した変格ミステリ・アンソロジー
甲賀「黒衣を纏う人」・川端「散りぬるを」・孫了紅「真偽の間」の3編が初読。既読のものは久しぶり(30年前後ぶりくらいかも)に読んだが、内容を覚えていてもとても面白く読んだ。ベストを選ぶとしたら、渡辺温「父を失う話」だろうか。
論考も面白く、特に劉臻「中国での変格ミステリの受容史」は勉強にもなった。
ハズレが一つもない傑作揃いのアンソロジー。強くお薦めいたします。

届いた本・冊子&購入本

83.瀬戸川猛資・松坂健『二人がかりで死体をどうぞ ―瀬戸川・松坂ミステリ時評集―』(盛林堂ミステリアス文庫)
 →1970年代の『ミステリマガジン』に掲載された瀬戸川猛資氏・松坂健氏の連載ミステリ時評を集成。
84.『解けてうれしい詰将棋』令和3年11月号(日本アマチュア将棋連盟
85.『将棋世界』2021年12月号(マイナビ出版