ミステリー

リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク『レヴィンソン&リンク劇場 皮肉な終幕』(扶桑社ミステリー)★★★☆

『刑事コロンボ』『エラリー・クイーン』『ジェシカおばさんの事件簿』等のミステリードラマ製作者コンビによる小粋な短編ミステリ10編が楽しめる1冊。 「ある寒い冬の日に」「愛しい死体」が双璧かな。 第2弾、お願いします。※本書は日本オリジナルだが、近…

深谷忠記『「法隆寺の謎」殺人事件』(光文社文庫)★★★☆

三月十三日、慶明大学考古学研究所から法隆寺の境内から出土した史料三十二点が盗まれた。笹谷美緒は手塚桐郎から会って話したいとの電話を受け、戸惑う。慶明大学考古学研究所の大学院生である彼はかつて美緒にしつこく言い寄り、壮と付き合うきっかけを作…

井上ねこ『花井おばあさんが解決! ワケあり荘の事件簿』(宝島社文庫)★★★

長野県平野市にある独居老人専門アパート「若鮎荘」(通称「ワケあり荘」)に住む元小学校教諭の花井朝美が様々な事件に首を突っ込み、解決していく連作集。「罪なき咎人」 水田で元小学校教諭・松村武雄の焼死体が発見された。警察は自殺として処理する方針…

松嶋智左『女副署長 緊急配備』(新潮文庫)★★★☆

日見坂署事件(前作参照)で管理者責任を問われ、佐紋署に左遷された田添杏美警視。赴任して間もなく、隣接署管内でひったくり事件が発生し緊急配備を敷いた最中に山間部で女性の死体が発見された。18年ぶりの殺人事件に署内が騒然とする中、港で警備部の巡…

大谷羊太郎『浄土ヶ浜殺人事件』(カッパ・ノベルス)★★☆

フリーアナウンサーの船越由佳子はうだつの上がらない夫に離婚を切り出した。最後の思い出にと離婚旅行をすることにした二人は、深夜高速バスで浄土ヶ浜に向かった。車中で若い女性が毒死し、翌日にはバスの乗客だった男の死体が浄土ヶ浜で発見され、知らな…

吉村達也『龍神温泉殺人事件』(講談社文庫)★★

銀座の超高級クラブ『パルフェ』のホステス・相原舞子(源氏名:相原季美子)が、江東区越中島の自宅マンションで惨殺された。凶器は牙で、部屋は血まみれだった。その夜、同僚のホステス・龍神季美子(源氏名:神田瞳)はクラブに何度か来た大泉辰郎に呼び…

若桜木虔『寝台特急出雲・大井川の殺人交差』(ジョイ・ノベルス)★★

午前四時、上り寝台特急《出雲八号》が金谷トンネルを出てすぐに投身自殺に遭遇し、急停車した。個室寝台で熟睡していた雑誌記者の西東南はベッドから床に転落して目覚め、隣の個室寝台の異変に気付いた彼女は車掌に話してドアを開けてもらうと、ベッドの上…

倉阪鬼一郎『鉄道探偵団 まぼろしの踊り子号』(講談社ノベルス)★★☆

東京・新橋の喫茶店「テツ」に集う鉄道ファンたち。鉄道探偵団を名乗る彼ら・彼女らが、急いで下りてきたばかりの新幹線ホームへ別の階段を使い駆け上がっていく鉄道写真家(「東京駅で消えた男」)、湘南ライナー1号を踊り子号に誤認させる男の目的(「ま…

津村秀介『伊豆の死角』(講談社文庫)★★

『小説NON』に1988年~92年にかけて発表した十篇を収録した第4短編集(初刊=1993年2月)。 文庫版のあらすじに旅情ミステリー傑作集とあるが、事件小説集と言うのが正しい。 収録作の殆どに金・不倫・セックスが絡み、淡泊な文体で書かれているため続けて読…

松嶋智左『女副署長』(新潮文庫)★★★

昇任し、県内初の女性副署長として日見坂署に赴任した田添杏美警視。八月三日、台風直撃による出動に備え、多くの署員が前泊していた。災害対策本部が設置された最中、署の敷地内で地域課第二係係長・鈴木警部補の刺殺体が発見される。証拠は雨で流され、防…

辻真先『9枚の挑戦状』(光文社文庫)★★☆

『文庫のぶんこ』で募集した「求む! 辻真先への挑戦状」に寄せられ、その中から選ばれた9つの謎。光文社文庫の編集者・中井はバンザイした辻真先の代わりにアマチュアたちに挑戦させることにした。鷹取ミステリークラブにも声がかかり、メンバーたちは9つ…

ホレーショ・ウィンズロウ&レスリー・カーク『虚空に消える』(Re-ClaM編集部)★★★

ロバート・エイディーが『Locked Room Murders and Other Impossible Crimes』で絶賛した幻の不可能犯罪ミステリ"Into Thin Air"が遂に邦訳。 トホホ系のトリックが連打されるためガッカリする人が多そうだが(小技を積み上げていくタイプの作品の宿命)、〝…

笹沢左保『同行者(どうぎょうしゃ)』(カッパ・ノベルス)★★☆

白昼の繁華街で夫と息子を刺殺された美也子。犯人・唐牛は覚醒剤の禁断症の錯乱状態を理由に不起訴となる。四年後、ホテルで唐牛と人妻の心中死体が発見され、美也子と再婚した夫・石毛の二人に容疑がかかるがアリバイが成立し、警察は心中と結論を下す。二…

山前譲編『日本縦断 世界遺産殺人紀行』(JOY NOVELS)★★☆

世界遺産を舞台とする短編を7編収録したアンソロジー。舞台となるのは「知床」「平泉」「富士山」「白川郷・五箇山の合掌造り集落」「紀伊山地の霊場と参詣道」「古都京都の文化財」「厳島神社」。西村京太郎「わが愛 知床に消えた女」(「知床 わが愛」改…

横溝正史・島田一男・井沢元彦・島田荘司/佳多山大地=編『悲劇への特急券 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編Ⅱ〉』(双葉文庫)★★★★★

『線路上の殺意』に続く鉄道ミステリ・アンソロジー第2弾。 横溝正史「探偵小説」 島田一男「鉄道公安官」 井沢元彦「不運な乗客たち」 島田荘司「ある騎士の物語」 以上、ビッグネームの傑作4編を収録。巻頭の横溝正史「探偵小説」は、鮎川哲也編『下り〝は…

鉄ミスアンソロジー遊び

鉄ミス&トラミス本の作業を兼ねて、「一度も鉄ミスアンソロジーに採られたことのない鉄ミス縛りのアンソロジー(全2巻)」を編む遊びをしました。Twitterでも呟いたけれど、備忘録を兼ねてこちらにも投下します。 ※トラミスに範囲を広げれば、斎藤栄の怪作…

千澤のり子『少女ティック 下弦の月は謎を照らす』(行舟文化)★★★★☆

小学五年生の少女・片瀬瑠奈が巻き込まれた事件を描いた連作集。「春 第一話 少女探偵の脱出劇」(「危険なすれ違い」改題)(初出=『ジャーロ』54号・2015年夏号) 五年生に進級したばかりの春。瑠奈はスイミングスクールに向かう途中、おばあさんに扮した…

サミュエル・ロジャース『血文字の警告』(Re-ClaM編集部)★★★☆

夏の休暇を年下の友人ジューンと過ごすことになった女子大生ケイト・アーチャーは、「グラッドストーン氏の屋敷に行ってはいけない。もしそうすれば、お前は後悔するだろう」と赤いクレヨンで書かれた脅迫状を受け取った。不安を覚えながらも〈谷間の農場(…

深谷忠記『津軽海峡+-の交叉』(講談社文庫)★★★★

女流推理作家・高岡沙也夏に会いに函館へ来た笹谷美緒。新作執筆の確約を得て安堵した美緒は沙也夏からこの後に来る銀嶺書店の弘田辰夫と三人で食事をと誘われ到着を待つが、彼は姿を現さなかった。 翌日、青函連絡船に乗り青森を訪れた美緒は、小説家志望の…

鉄ミス&トラミス大賞2020

《鉄ミス&トラミス大賞2020》受賞作 〈新刊・新作部門〉 受賞作なし 〈旧作部門〉 上田廣『駅猫 鉄道推理短編集』(大正出版) 〈特別賞〉 鮎川哲也・西村京太郎・夏樹静子・山村美紗/佳多山大地編『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編〉』(双…

芦辺拓『名探偵総登場 芦辺拓と13の謎』(行舟文化)★★★★★

バラエティに富んだ作品が揃った自選短編集になっています。まさに「芦辺ワールド見本市」。ファンは勿論、芦辺作品を読んだことのない人にもお薦めです。以下、Twitterに投下した収録作の簡単な感想。「芦辺探偵事務所」所員名簿 森江春策、童顔すぎるよう…

井上雅彦監修『蠱惑の本 異形コレクションL』(光文社文庫)★★★★★

前巻『ダーク・ロマンス』も素晴らしかったが、本書はそれ以上。私的オールタイムベストに入る、最高のアンソロジーでした。以下、Twitterに投下した収録作の簡単な感想。大崎梢「蔵書の中の」 亡くなった祖父の蔵書を引き取りに来る古本屋を待つ昌希の前に…

オリヴァー・ハリス『バッドタイム・ブルース』(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆

原題『The Hollow Man』、Oliver Harris(2011年)数年前に中断(つまらなかったわけではなく、その時の自分と波長が合わなかった)した作品に再挑戦しました。ニック・ベルシーは優秀な刑事だがギャンブルにはまり家を失ったうえ所持金は底をつき、ホームレ…

レオ・ブルース『冷血の死』(ROM叢書16)★★★★

〈歴史教師探偵キャロラス・ディーン〉シリーズ第2作である本作は、米版が刊行されなかったため入手困難の稀覯本として知られているのだとか(同人出版である日本版も入手困難本になってしまった……)。今回キャロラスが挑むのは、田舎町の町長の溺死事件。事…

J・B・ハリス-バーランド『古本屋サロウビイの事件簿』(ROM叢書15)★★★☆

作者は19世紀から20世紀にかけて活躍した英国作家だが、現在では忘れられているそうな。 表題の「古本屋サロウビイの事件簿」全6編は、古物商ミステリー連作の元祖というべきシリーズ(解説でシンポ教授が「シャーロック・ホームズのライヴァルたちの最後衛…

井上雅彦=監修『ダーク・ロマンス 異形コレクションXLIX』(光文社文庫)★★★★★

《異形コレクション》、復活。高品質のアンソロジーでした。(11月25日読了)以下、Twitterに投下した収録作の簡単な感想。櫛木理宇「夕鶴の郷」 クズ男が報いを受ける話(超簡略化)。 伏線がじわじわ効いてくるラストが上手い。黒木あるじ「ルボワットの匣…

峰隆一郎『長崎平戸殺人事件』(天山文庫)★★

長崎県平戸市の切支丹寺で男が刺殺され、目撃者の若い女性が記憶喪失になった。被害者は福岡の家具店主人・茅野康平、女性は上坂玲子と判明するが偽名だった。元警視庁捜査一課刑事で便利屋の栢次郎は、喫茶店チェーンのオーナー・広池達郎の依頼でこの事件…

辻真先『黄昏(トワイライト)の殺人特急』(ケイブンシャノベルス)★★☆

雑誌のグラビアで見た水仙に魅かれ越前岬へ行くことにした画家の佐伯城介は寝台特急『北陸』で初恋の人・五月道江とそっくりな女性を見て衝撃を受ける。翌日、『トワイライトエクスプレス』で道江との関係を終わらせる原因を作った郷原が心中したと知る。し…

鮎川哲也・西村京太郎・夏樹静子・山村美紗/佳多山大地=編『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編〉』(双葉文庫)★★★★★

戦後を代表するミステリー作家4人の短・中編を収録した鉄道ミステリ・アンソロジー。 鮎川哲也「早春に死す」 西村京太郎「あずさ3号殺人事件」 夏樹静子「特急夕月」 山村美紗「新幹線ジャック」 以上、4編を収録。前半2作はアリバイ崩し。 鮎川哲也「早…

大谷羊太郎『東京青森夜行高速バス(「ラ・フォーレ号」)殺人事件』(カッパ・ノベルス)★★☆

札幌での結婚式に出席後、友人二人と世田谷の自宅に戻った淵川志郎は妻・真佐子の刺殺体を発見する。一方、淵川らに同行して夜行バスと列車を乗り継ぎ札幌へ行った紺野綾子は、婚約者・副島優樹の行動に不安に駆られていた。事件の捜査にあたる警視庁捜査一…