ミステリー

山本巧次『早房希美の謎解き急行』(双葉文庫)★★★

池袋駅をターミナルとする大手私鉄・武州急行電鉄に勤める早房希美が、「埼玉県警にその人あり」と言われる鬼刑事だった祖父・喜一郎の知恵を借りながら様々なトラブルを解決する連作集。 踏切の障害物検知装置の作動が頻発する裏にある企みが暴かれる「遮断…

阿井渉介『雪列車連殺行』(講談社文庫)★★★☆

早朝、上野駅に着いた急行「津軽」から死体が消え、翌日、駅近くにあるデパートのショウ・ウィンドウに飾られた。被害者が日進興業取締役で南蔵王ホワイトランドの佐山義男と判明し、南蔵王へ向かった牛深警部補は到着早々、アトラクションにある全てのサル…

草川隆『L特急「あずさ」の殺人』(FUTABA NOVELS)★★☆

新宿駅に十九時二十五分に到着したL特急〈あずさ18号〉で美容整形医・望月耕一の服毒死体が発見された。時間は遡って午後六時頃、長野県松本市で小学生が青酸入りジュースを飲んで死んだため、無差別殺人として捜査が開始されたが、望月が浅間温泉の喫茶店…

吉村達也『由布院温泉殺人事件』(講談社文庫)★

大人気の恋愛小説家・本郷慶と結婚した朝霧玲子。スチュワーデス仲間で親友の森田有美は結婚式が行われた教会の前で黒いワンピースに喪章をつけたシノダ・ヒロミを目撃し、玲子に知らせようとするがアパートで惨殺される。臨場した夏目大介警部は壁紙に血で…

深谷忠記『南紀・伊豆Sの逆転』(光文社文庫)★★★

南紀・白浜の「白浜エネルギーランド」で三宅今日子が毒殺された。ハンドバッグにはワープロで書かれた〝T・H〟と名乗る人物からの呼び出しの手紙があった。翌日、潮岬で波多野敬の服毒死体が発見され、〈白浜の殺人は自分がやった……〉と書かれた遺書と思…

皆川博子『花の旅 夜の旅』(扶桑社文庫)★★★★

売れない作家・鏡直弘のもとに、花の名所をモデルを使って紹介する『花の旅』というグラビアに添える連作短篇の連載依頼が舞い込んだ。快諾した彼は撮影旅行に同行し、皆川博子のペンネーム(鏡直弘のアナグラム)で連載を開始。平戸と網走の取材は何事もな…

草川隆『個室寝台(コンパートメント)殺人事件』(エイコー・ノベルズ)★★☆

寝台特急〈富士〉の個室寝台で女性の生首が、隅田川で胴体が発見された。被害者は奇術師フー・谷田こと高木徹郎の妻と判明。彼は〈富士〉の個室寝台の乗客の一人で、同じ車輌にいたと知らなかったというが疑わしい。駿河湾で残りの四肢が発見され、召喚しよ…

芦辺拓『鶴屋南北の殺人』(原書房)★★★★☆

――本格ミステリは、犯人のなり手がいなくなってからが勝負! (「あとがき――あるいは好事家のためのノート」より) 「わたしが取り返してほしいものとは……鶴屋南北なのです」国劇協会調査研究センター学芸フェロー・秋水里矢の依頼を受け、京都へ向かった森…

種村直樹『日本国有鉄道最後の事件』(徳間文庫)★★★

昭和61年12月4日、東京発〈ひかり41号〉が名古屋駅に到着した。翌4月1日に発足する中京旅客鉄道株式会社に関する重大会議に出席する要人三人――自由党衆議院議員・星野一郎、経済連副会長・栗原和浩、国鉄再建監視委員を務める経済学者・佐田教授――を出迎える…

津村秀介『京都着19時12分の死者』(講談社文庫)★★☆

下り新幹線ひかり253号での中年女性毒殺事件、京都のホテルでの前科四犯のヤクザ者の毒殺事件、2つの現場から同じ渦状紋が検出された。中年女性が急行アルプス5号で信濃大町へ向かっていたことが判明し、捜査のため上京した堀内部長刑事を待っていたのは新…

日下圭介『女怪盗が盗まれた』(光文社文庫)★★★☆

文庫オリジナル短編集。7編収録。 「正直なうそつき」(初出=『小説推理』1976年4月号) 昭和二十年七月七日、千葉県某所の工事現場で殺人事件が起きた。殺されたのは倉庫番として雇われていた元兵隊で現場は密室、容疑者は四人の農業学校の生徒。犯人は誰…

大谷羊太郎『西麻布 紅の殺人』(光文社文庫)★★★

事件は練馬区で起きた。梨村建築設計事務所の相川と北見は残業中、隣の鏑木商事ビルで社長の鏑木千一が銃撃されるのを目撃。二人は急行するが鍵がかかっていて部屋に入れず、通報するため事務所に戻った相川は、室内で鏑木の射殺体を発見する。 所変わって、…

吉村達也『修善寺温泉殺人事件』(ケイブンシャノベルス)★★

山越精器のOL渡瀬里佳子の扼殺体が代官山のアパートで発見された。彼女の顔と両手はウルシでかぶれており、ウルシが混入されていると知らずに愛用の液状石鹸を使い、洗い流そうとした所を犯人に襲われたと思われる。二日後、伊豆・修善寺温泉の露天風呂「…

草川隆『無縁坂殺人事件』(廣済堂文庫)★★

「無縁坂で自殺した主婦には多額の保険金がかけられている。亭主の先妻も海で事故死していて、多額の保険金が下りているはずだ。関心があったら取材してみろ」――『週刊クール』の新前編集者・白井浩介は匿名の密告電話を受けた。調べてみると、無縁坂で青山…

津村秀介『仙山線殺人事件』(BIG BOOKS)★★☆

将棋の世界では、賭け将棋で生計を立てている者のことを「真剣師」と呼んでいる。宝塚温泉と仙台・天童で同日に真剣師の大会が開催されることになり、横光裕治と三木正利は宝塚温泉の大会に、戸倉元太と久我悦雄は仙台・天童の大会に出場するため、横浜から…

モーム、フォークナー他/小森収=編『短編ミステリの二百年1』(創元推理文庫)★★★★

短編12編(全て新訳)に編者の評論を収録したアンソロジーの第1巻。リチャード・ハーディング・デイヴィス「霧の中」In the Fog ロンドンの社交クラブ〈グリル〉で語られる3つの物語は意外な結末を迎える――。 「クイーンの定員」に選ばれた(#29)短編集の…

津村秀介『時間の風蝕』(集英社文庫)★★★

十月一日、新横浜のホテル・モリシャス。黒いスーツの女は強い西風の向こう側からやってきた。三十分後、女はホテルを去り、三〇六号室に男の毒殺死体が残されていた。被害者は宿泊カードから杉野康則と思われたが、彼の代理で女と会うことになっていた小玉…

阿井渉介『湖列車連殺行』(講談社文庫)★★★

上野駅五番線に到着した上野・宇都宮間の快速電車「ラビット」から降りた木俣喜一の背から煙が上がり、まもなく火が吹き出し上半身が炎に包まれた。彼は一命を取り留めたが、病院で点滴の針を打ち変えられて殺される。犯行時刻、看護婦が青く光る女の幽霊を…

大山誠一郎『アリバイ崩し承ります』(実業之日本社文庫)★★★☆

5000円でアリバイ崩しを引き受ける美谷時計店の店主・美谷時乃が鮮やかにアリバイが絡んだ事件の謎を解き明かす、安楽椅子探偵物の連作集第1弾。『2019本格ミステリ・ベスト10』第1位。 「時計屋探偵とストーカーのアリバイ」(初出=『月刊J-novel』2014年1…

山本巧次『希望と殺意はレールに乗って アメかぶ探偵の事件簿』(講談社)★★☆

令和X年、講栄館の編集者・宝木啓輔は講栄館の中興の祖とも言われる伝説の編集者・沢口栄太郎から昭和を代表する推理作家・城之内和樹の探偵譚を聞くことになった。 昭和32年、鉄道の新線(恵那線)建設を陳情するため長野県清田村から上京していた村会議員…

上田廣『駅猫 鉄道推理短編集』(大正出版)★★★☆

火野葦平らと戦中文学で脚光を浴び、兵隊小説・鉄道小説・鉄道史伝を執筆、国鉄本社総裁室修史課嘱託として『日本国有鉄道百年史』の編纂にあたった上田廣(本名:浜田昇。1905年6月18日~1966年2月27日)による鉄道ミステリ連作集。「闇服」 出勤したわたし…

深谷忠記『0.096逆転の殺人』(光文社文庫)★★☆

毛布に包まれ性器がえぐり取られた全裸の男性の死体が江戸川に浮かんでいた。被害者はT大学大学院修士課程二年生・久保寺喬と判明する。その夜、バー「フラミンゴ」のママ兼オーナー・太田美那子のマンションに切断された彼の性器が送られてきた。二人に肉…

大谷羊太郎『越後七浦殺人海岸』(光文社文庫)★★☆

吉成行夫には秘密があった。高校3年生だった12年前、想いを寄せるクラスメイトの宮地亜以子が廃工場で男を殺し、その廃工場の塀を一瞬ですり抜けて逃げるのを目撃したのだ。地元の所沢で活魚和風料理店を経営する彼は、同級生の送別会で浦上専一から卒業後消…

深谷忠記『成田・青梅殺人ライン』(光文社文庫)★★☆

青梅市の鹿沼神社の参道脇にある児童遊園地で、私立共友学園の三年生・鳴神伸一が殺された。共友学園は共栄館大学の提携校。推薦枠が三名しかない医学部志望だった彼は、元恋人で推薦枠を争う篠口礼子の試験不正を探っていた。警察は彼女の家庭教師をしてい…

辻真先『崩壊 地底密室の殺人』(カッパ・ノベルス)★★☆

駿河湾を震源とするマグニチュード8の大地震に見舞われた東京。オープンを10日後に控える六本木に建造された大深度構造物「ジオトピア」の内部を弟夫婦二組に案内していた三ツ江建設の五十嵐励は、地下23階で目を覚ます。地下30階から地下水が迫る中、何も…

鉄ミス&トラミス大賞2019

《鉄ミス&トラミス大賞2019》受賞作 〈新刊・新作部門〉 佳多山大地『トラベル・ミステリー聖地巡礼』(双葉文庫) 〈旧作部門〉 甲賀三郎『妖魔の哄笑』(春陽文庫)※「鉄ミス&トラミス大賞」とは、この1年に読んだ鉄ミス&トラミスの中からお薦め作品を…

F・W・クロフツ『列車の死』(ハヤカワ・ミステリ文庫)

1942年、イギリスはドイツ軍の猛攻に苦しめられていた。戦時内閣は国内にある全ての放電管を、エジプトでロンメルと対峙するマッグレガーの部隊に送る極秘の物資輸送を決定する。臨時輸送列車が軸箱の故障により停車したため先行することになった後発の臨時…

草川隆 トラミス作品リスト

01.個室寝台(コンパートメント)殺人事件(1986年7月) 02.無縁坂殺人事件(1987年2月) 03.L特急「あずさ」の殺人(1987年3月) 04.寝台特急出雲殺人事件→寝台特急出雲 殺意の山陰路(1987年11月) 05.急行〈アルプス82号〉の殺人(1988年2月) 06.…

中町信 著作リスト

01.新人賞殺人事件→新人文学賞殺人事件→模倣の殺意(1973年6月) ※第17回江戸川乱歩賞候補作『そして死が訪れる』改題 ※『模倣の殺意』の題で『推理』1972年9~11月号連載 02.殺された女→「心の旅路」連続殺人事件(1974年2月) ※第18回江戸川乱歩賞候補作…

矢島誠 トラミス作品リスト

01.霊南坂殺人事件(1988年1月) 02.「六大都市」Kの殺人(1988年5月) 03.鎌倉XX(ダブルエックス)の殺人(1988年11月) 04.名古屋殺人事件(1989年11月) 05.時の殺意 京都(1991年2月) 06.寝台特急「北斗星」0文字の殺人→「北斗星」0文字の殺…