時代小説

山本巧次『江戸美人捕物帳 入舟長屋のおみわ 春の炎』(幻冬舎時代小説文庫)★★★

季節は春。海辺大工町の人が使っていない納屋が燃え、付け火と断定された。数日後、お美羽が仕切る入舟長屋で火事騒ぎが起きた。長屋の住人の働きもあり仏師の仙之介の家の裏にある塀が少し燃えただけで済んだが、紐が発見され付け火であることが確定する。…

山本巧次『江戸美人捕物帳 入舟長屋のおみわ 夢の花』(幻冬舎時代小説文庫)★★☆

霜月。北森下町にある入舟長屋の大家の娘・お美羽は、店子のお喜代から隣に住む指物師の長次郎が帰ってこないと相談された。十日後、長次郎は戻ってきたが様子がおかしい。問い詰めると、名も知らぬ女に誘われ屋形舟で浅草の北にある家に行き床に就いたが寝…

南條範夫『月影兵庫 上段霞切り』(光文社時代小説文庫)★★☆

旗本の次男坊・月影兵庫は十剣無統流の遣い手。義理の伯父で老中の松平伊豆守信明から邸から逃げた綾姫を連れ戻すよう頼まれた兵庫は、宗像十太夫・岡島忠衛門・黒祖父左京・奥女中の桔梗と東海道を往き、様々な事件に遭遇する――。 月影兵庫シリーズ第1弾。 …

朝松健『血と炎の京(みやこ)―私本・応仁の乱―』(文春文庫)★★★★★

癒しと救済を求めて彷徨う八代将軍足利義政の妻・日野富子。山名宗全に一族郎党を殺され、額に「犬」の字を刻まれ地面に縛られていた男。半死半生の所を細川勝元に助けられた彼は宗全に復讐するため戦場を駆けるが、新兵器の登場により京は地獄絵図となり果…

山本巧次『江戸美人捕物帳 入舟長屋のおみわ』(幻冬舎時代小説文庫)★★☆

北森下町にある入舟長屋の大家の娘・お美羽は美人だが女丈夫との評判のせいか二十一歳になっても縁談がまとまらない。そんな彼女は店賃の取り立てや住人の世話をして大家の父・欽兵衛を助けている。ある日、長屋の住人で細工職人の栄吉から店賃の支払いを少…

山本巧次『花伏せて 江戸の闇風 二』(幻冬舎時代小説文庫)★★★

常磐津の文字菊師匠ことお沙夜は、悪人から金を掠め取る闇の仕事師の頭領という裏の顔を持つ。今回の標的は、大掛かりな詐欺で商家から大金を騙し取り破滅させる町名主・間島新左エ門と菓子屋の主人で金貸しの裏稼業をしている一文字屋惣兵衛。火盗改が仕事…

山本巧次『江戸の闇風 黒桔梗裏草紙』(幻冬舎時代小説文庫)★★★

常磐津の師匠・文字菊ことお沙夜は、裏の仕事師の顔を持つ若い女性。彼女は弟子の両替商「大高屋」から磯原藩が八千両を貸してくれる相手を探しており、材木商「甲州屋」が手を挙げていると聞く。隣の住人で指物職人の彦次郎から甲州屋に纏わる噂を聞いたお…

倉阪鬼一郎『ぬりかべ同心判じ控』(幻冬舎時代小説文庫)★★★

「ぬりかべ同心」こと北町奉行所定廻り同心・甘沼大八郎が怪事件・難事件のからくりを解く、クラニーの正統派捕物帳第2作。 第一話「仏罰の鳥を追え」 駒込の法界寺で秘仏が御開帳され、住職の榮心和尚が「行いを正しくせねば、仏罰が下る」と説法した直後、…

笹沢左保『直飛脚疾る』(光文社時代小説文庫)★★★

笹沢左保、300冊目の単行本『一千キロ、剣が疾る』(1990年10月刊)の改題文庫化。『小説宝石』掲載の5篇(1980年連載)に書下ろしを加えた全6篇を収録。 直飛脚――十一代将軍家斉の信書(密書)を定められた刻限までに目的地に届ける武士たち。彼らは失敗や…

多岐川恭『首打人左源太事件帖』(徳間文庫)★★★

『首打人左源太』(双葉社)改題・再文庫化。 潮地左源太、三十一歳。水戸藩最強の剣士だった彼は密通した妻を斬り、藩の重臣の縁故者との仕合で相手を叩きのめして寝たきりにたため、家禄を取り上げられ浪人になった。剣の腕を活かし一人十両で罪人の首打ち…

泡坂妻夫『びいどろの筆 夢裡庵先生捕物帳』(徳間文庫)★★★★

荒木無人斎流柔術の達人にして空中楼夢裡庵という雅号を持つ文人でもある富士宇衛門は、れっきとした八丁堀定町廻り同心。この夢裡庵先生を狂言回しにした捕物帳シリーズの第1集。 〈宝引の辰捕者帳〉に続く第2の捕物帳である本シリーズは「謎解き役と視点人…

多岐川恭『目明しやくざ』(光文社時代小説文庫)★★★☆

多岐川は〈ゆっくり雨太郎捕物控〉をはじめ、捕物帳(やそれに類するもの)を10シリーズ以上手掛けている。本シリーズは、岡っ引の弥七の甥でやくざな男の伊佐吉が難事件に挑む連作。 1992年8月刊の本書は『江戸妖花帖』(1975年6月刊)改題となっているが、…

笹沢左保『美女か狐か峠みち 追放者・九鬼真十郎2』(徳間文庫)★★★★

ある事件を起こして北町奉行・遠山景元に重追放(死罪、遠島に次いで三番目に重い刑罰)を言い渡され、愛犬シロとともに各地を放浪する浪人・九鬼真十郎が行く先々で巻き込まれた事件を解決する連作シリーズ。 本書は1978年11月に桃園書房から刊行された第2…

笹沢左保『江戸の夕霧に消ゆ 追放者・九鬼真十郎1』(徳間文庫)★★★

笹沢の時代小説では〈木枯し紋次郎シリーズ〉が有名だが、個性的なキャラクターが主人公のシリーズは他にもある 。このシリーズもその一つで、ある事件を起こして北町奉行・遠山景元に重追放(死罪、遠島に次いで三番目に重い刑罰)を言い渡され、愛犬シロと…

多岐川恭『出戻り侍』(光文社時代小説文庫)★★★☆

多岐川恭は時代小説の名手でもあった。『女人用心帖』から『情なしお源金貸し捕物帖』まで多数刊行され、ジャンルは歴史小説・歴史推理・時代伝奇・捕物帳(とそれに類するもの)・ピカレスクと多岐にわたっている。 本書は『深川売女宿』(桃源社/1972年刊…

朝松健『本所お化け坂 月白伊織』(PHP文庫)★★★

妖かしに取り憑かれた人の前に現れる“本所お化け坂”。坂の上にある第六天社の神宮寺の百怪寺に住む浪人・月白伊織と息子の太郎が、日本一の祟り神とされる第六天魔王の威徳を借り、妖かしを祓う連作集。書下ろし。 第一話「蠅声(さばえ)」 上野沼田藩の奥…

太田蘭三『旗本けんか侍』(祥伝社文庫)★★☆

江戸では毎晩辻斬りが現れていた。南の奉行所へ届けられた密告状には、のっそりの又七郎が辻斬りの主だと書かれてあり、町方は探索に当たっていた。ある夜、霞の銀次は大名屋敷と間違って目付・神尾小刑部の屋敷に忍び込み、三男坊の又七郎に見つかるが、「…

藤沢周平『秘太刀馬の骨』(文春文庫)★★★★

ある北国の藩で、筆頭家老・望月四郎右衛門隆安が暗殺されるという大事件が起きた。それから六年後。近習頭取・浅沼半十郎は筆頭家老・小出帯刀の屋敷へ呼ばれ、望月暗殺に使われた秘太刀「馬の骨」の遣い手を探索する甥の石橋銀次郎の手伝いを下命される。…

山田風太郎『甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1)』(講談社文庫)★★★★★

甲賀卍谷と伊賀鍔隠れは四百年にわたる宿怨の間柄だったが、甲賀の頭領・弾正の孫の弦之介と伊賀の頭領・お幻の孫の朧との婚礼を控えており、和解間近であった。慶長十九年四月の末、大御所・徳川家康は両頭領を駿府城へ呼び出す。このころ、家康は秀忠の後…

岡田秀文『源助悪漢(わる)十手』(光文社時代小説文庫)★★★

江戸市中に悪名を轟かす浅草西仲町の源助親分が難事件・怪事件に挑む連作集。7篇収録。以下、各篇の簡単な感想(真相に触れている部分は背景と同色にしています)。 「山谷堀女殺し」(初出=『小説宝石』2002年5月号) 山谷堀の岸で女の死体が見つかる。現場…