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『幻想と怪奇 6 夢境彷徨 種村季弘と夢想の文書館』(その4)

『幻想と怪奇 6』感想メモ、ラストです。●夢見る人々(つづき) アルジャーノン・ブラックウッド/渦巻栗=訳「トルネード・スミスの冒険」 有名な株式仲買人T・スミスは晴れやかな幸福感に包まれてベッドから飛び出した。出勤途中、少年から青い切符を買っ…

『幻想と怪奇 6 夢境彷徨 種村季弘と夢想の文書館』(その3)

『幻想と怪奇 6』、終盤に突入。《ショートショート》 井上雅彦「メデュウサ」 連日、床の上を這うように歩く夢を見る女。連日、美女から「あなたに会いたい」と求められる夢を見る男。二人の夢が交差する時――。 「そういうことだったのか!」と膝を打つラ…

『幻想と怪奇 6 夢境彷徨 種村季弘と夢想の文書館』(その2)

引き続き、『幻想と怪奇 6』をちびちび読んでいる。●書き留められた夢 エドワード・ルーカス・ホワイト/夏来健次=訳「セイレーンの歌」 メドルス号でボルティモアからリオ・デ・ジャネイロへ向かったわたしは耳が聞こえない一等航海士のウィルソンと親しく…

『幻想と怪奇 6 夢境彷徨 種村季弘と夢想の文書館』(その1)

『幻想と怪奇 6』をちびちび読んでいる。H・P・ラヴクラフト&アンナ・ヘレン・クロフツ/南條竹則=訳「詩と神々」 詩を愛する孤独な乙女マーシャはヘルメースに誘われ、ギリシアの神々の宮居で偉大な六人の詩人と会う――。 ファンタジー。南條氏による示…

『ミステリーズ! vol.91』を拾い読み

『ミステリーズ! vol.91』(OCTOBER 2018)を拾い読み。 齊藤飛鳥「屍実盛(かばねさねもり)」 寿永二年(1183年)六月、篠原の戦いで平家軍の殿軍(しんがり)をつとめていた武将が、手塚太郎金刺光盛(てづかのたろうかねざしのみつもり)に討ち取られた…

『ジャーロ』No.42を拾い読み

『ジャーロ』No.42(2011 SUMMER)を拾い読み。 千澤のり子「見えない流星群」 合格発表の日に事故で重傷を負い、ゴールデンウィーク明けから学校に通えるようになったわたし(菅野美月)は、クラスメイトの高橋に勧誘され天文部に入部した。6月、おひつじ座…

『ミステリマガジン』2011年6月号を拾い読み

『ミステリマガジン』2011年6月号(No.664)を拾い読み。 辻真先「見てない目撃者」(放映日=2010年2月6日) 『名探偵コナン』第565話の脚本。 北原尚彦「ビリー君の赤ひげ連盟事件」 給仕のぼくが事務所の留守番をしていると、ハロルド・ウェルシュと名乗る…

『ミステリマガジン』2011年7月号を拾い読み(1)

『ミステリマガジン』2011年7月号(No.665)を拾い読み。特集は後日読むことにして、今回は毎回チェックしている連載の覚書。 芦辺拓『七人の探偵のための事件』(最終回) 名鳴まつり(那々木神社の例大祭)が始まった。唯一の見ものは、山車の巡行。山車と…

『ミステリーズ! vol.46』を拾い読み

『ミステリーズ! vol.46』(2011年4月)を拾い読み。 芦辺拓『スチームオペラ 蒸気都市探偵譚』(第四回) ホテルでの密室殺人から三日後。午前で仕事を終えたエマは、ユージンを連れ出しロンドンを案内しようとするが、拒まれる。帰宅するふりをして変装し…

『ミステリーズ! vol.45』を拾い読み

『ミステリーズ! vol.45』(2011年2月)を拾い読み。 倉知淳「私がデビューしたころ 新人賞を獲らずにデビューしてもまあどうにかなるものだというお話」。戸川さん、すげぇ。 大山誠一郎「Cの遺言」 クルーズ船〈ラヴィニア〉のサンルームで、コスメティク…

『ミステリマガジン』2011年5月号を拾い読み

『ミステリマガジン』2011年5月号(No.663)を拾い読み。 トレヴェニアン「林檎の樹」The Apple Tree(初出=《Antioch Review》2000年春号) バスク地方に住む二人の老女の物語――。まぁ、ありがちな話。 ドン・ウィンズロウ「オールドメン・アンド・オールド…

『ミステリマガジン』2011年4月号を拾い読み

『ミステリマガジン』2011年4月号(No.662)を拾い読み。 高橋葉介「夢幻紳士 出張篇 座敷鬼」(書下ろし) とある料亭の座敷に出る様になった鬼を払うよう依頼された夢幻魔実也が見たものは――。「夢幻紳士」シリーズ最新作。ファンへのささやかなプレゼント…

『ミステリマガジン』2011年3月号を拾い読み(1)

『ミステリマガジン』2011年3月号(No.661)を拾い読み。特集は後日読むことにして、今回は単発記事と連載の覚書。 権田萬治「第一次大戦での大量死と本格探偵小説との関係についての疑問――笠井潔氏のチャンドラーやヴァン・ダインに関する見解をめぐって」…

『ミステリマガジン』2011年2月号を拾い読み

『ミステリマガジン』2011年2月号(No.660)を拾い読み。 レイ・ラッセル「これは本心からいうんだぞ」And I Mean That Sincerely!(初出=《プレイボーイ》1964年8月号) 作家クレイトン・ホーンはハリウッドに新参の男に語る。プロデューサーのケン・グラミ…

『ミステリーズ! vol.44』を拾い読み

『ミステリーズ! vol.44』(2010年12月)を拾い読み。 明神しじま「商人の空誓文」 異国から来た黒い外套を着た男は、広場で少女からりんごを買い酒場へ入った。酒を注文しりんごを剥いていると、青年に声をかけられる。二人は七年前、ノドの国で起きた出来…

『ミステリマガジン』2011年1月号を拾い読み

売り切れの書店が続出らしい『ミステリマガジン』2011年1月号(No.659)を拾い読み。 《特集/「相棒」特命係へようこそ》。水谷豊がインタビューで『デストラップ/死の罠』(アイラ・レヴィンの戯曲を映画化)が大好きだと言っていて嬉しかった。マイケル…

『ミステリーズ! vol.43』を拾い読み

『ミステリーズ! vol.43』(2010年10月)を拾い読み。 愛川晶「私がデビューしたころ 三週間戦争」。へー、『化身』に続編があったのか。掲載されているのだから問題はないのだろうけど、ここまで赤裸々に書かなくても……(笑)。 美輪和音「強欲な羊」 資産…

『ミステリマガジン』2010年11月号を拾い読み

『ミステリマガジン』2010年11月号(No.657)を拾い読み。 「米国暗黒小説全集発行計画 これがノワールの精髄だ!後篇」。全作とはいわないけど、半分くらいは翻訳されるといいな。10作の中ではデイヴィッド・グーディス“Cassidy's Girl”が一番読みたい。 小…

『ミステリマガジン』2010年9月号を拾い読み

『ミステリマガジン』2010年9月号(No.655)を拾い読み。 ピーター・トレメイン「罪、犯せし者たち」Those That Trespass(初出=マクシム・ジャクボウスキー編“Chronicles of Crime”) 小さな教会で黄金の十字架と銀の聖餐杯(チャリス)が盗まれ、イボー神…

『ミステリマガジン』2010年7月号を拾い読み

『ミステリマガジン』2010年7月号(No.653)を拾い読み。 「迷宮解体新書」第31回 門前典之。前例のない動機のアイディアが気になる。 マイクル・コナリー「ちかみち」Short Cut(初出=小学校高学年向けホラー・アンソロジー“Half-Minute Horrors”) ちかみ…

『ミステリマガジン』2010年5月号を拾い読み

『ミステリマガジン』2010年5月号(No.651)を拾い読み。 ロバート・B・パーカー追悼特集。深夜に放送していた『私立探偵スペンサー』*1(スペンサー:ロバート・ユーリック[星野充昭]、スーザン:バーバラ・ストック[井上喜久子]、ホーク:エイヴリー・ブル…

『ミステリマガジン』2010年3月号を拾い読み

『ミステリマガジン』2010年3月号(No.649)を拾い読み。「なぜ犬ミステリ特集?」と思ったが、ディーン・クーンツ『一年でいちばん暗い夕暮れに』の刊行に合わせてのことらしい。 霞流一「冷たい天使」(書下ろし) 雪の夜、パートタイムで探偵をしている俺…

『ミステリマガジン』2009年5月号を拾い読み

積んでる本を読む気になれなかったので、『ミステリマガジン』2009年5月号(No.639)を拾い読み。 『さよなら、愛しい人』刊行直前ということで、冒頭3章の先行掲載、エッセイ、ガイド、短篇パスティーシュ3作を掲載。特集以外では連載作品のほか、バリー・…

宮原龍雄「三つの樽」

二つの樽を積んだオート三輪とトラックが追突事故を起こし、樽の一つから裸の女の死体(被害者はモデルの若杉陽子と判明)が見つかる。運転手の証言によると、その樽には須田画伯の製作になる石膏の裸像が入っているはずで(運転手が積み込みを手伝い、石膏…