辻真先『津軽、殺人じょんから節』(ジョイ・ノベルス)★★☆

“夕刊サン”のデスク・可能克郎は、田丸部長の命令で津軽へ行くことになった。マスコミに人気の在野の考古学者・滑河修一の原稿を受け取るためである。青森へ向かう車中、克郎は大劇魔団の演出家・皆川喬作と再会。仙台駅のホームで松乃井一人を見かけた皆川は克郎と共に車中を探すが、一人の巧みな変装を見抜けず取り逃がしてしまう。弘前に着いた彼らはホテルへ泊まると、そこにはイベントプロデューサー・大塔寺燃と妹の倫がいた。市長選挙が近い津軽市で、民政党の市長候補・鵜崎雅雄のアピールを狙った町おこしイベント(津軽三味線滑河の講演会)のプロデュースをするため青森を訪れていたのだ。津軽へ入った克郎は、倫から一人こと上月新吾からの電話の取り次ぎを頼まれ、その任を果たす。翌日、滑河から原稿を受け取った克郎は、燃の秘書・芳賀英子からリハーサルに出るよう言われ、遅まきながら田丸部長の策略にまんまとかかっていたことを悟る。燃から倫を探すよう頼まれた克郎は、エントランスの外を歩く倫を追いかけ、川で死体を発見する。なんと、その死体は新吾だった。燃は倫から疑われ、真相究明に乗り出す。
塔寺姉妹&可能克郎シリーズ第2作。一人の氏素性と倫の父親が判明し、急展開となる本作。相変わらずスラスラと読めるので、軽いミステリーを読みたい場合に最適(『奥飛騨、殺人慕情』を読む必要はあるが)。トリックは無茶なうえ自然現象も絡んでくるので、憤る人がいるかも知れない(個人的にこういうのは好きだけど)。一方、シリーズを通しての謎は深まるばかり。この先どうなるのだろうか。ところで、今回の章題の趣向は何なのだろう。(2005/5/12記)