ポール・アルテ『殺す手紙』(ハヤカワ・ミステリ)★★★

原題“LA LETTRE QUI TUE”/1992/平岡敦=訳/ポケミスNo.1840

密室不可能犯罪の巨匠ポール・アルテ
新機軸に挑んだ巻き込まれ型サスペンスの傑作(帯の惹句)

1946年4月。ぼく(ラルフ・コンロイ)は、親友のフィリップ・マクドーネルから“使われなくなった物置小屋に行き午後8時ぴったりにランタンを灯し、カルデュー・ロードで青いフォード車の運転手に道を教えたあと、ある屋敷を訪れて臨機応変に対応しろ”という内容の奇妙な手紙を受け取る。フィリップの正気を疑いつつも指示通りに行動したぼくは、アーサー・ワード卿の屋敷でロビンソンという秘密諜報員と勘違いされる。ロビンソンを演じることにしたぼくは、部屋でパーティーの招待客のひとりラッセル牧師の死体を発見し、逃亡する。この事件をきっかけに、ぼくの人生は大きく変わっていく。
※展開をばらしている箇所は背景と同色にしています。
約2年ぶりになるポール・アルテの邦訳長篇は、ノン・シリーズの巻き込まれ型スリラー。
序盤は危機また危機でグイグイ読ませるが、中盤に入り一気に盛り下がる。「警察が君の無実を確信したから安心しなさい」はないよ。犯人と動機、本当にフィリップは二重スパイだったのか、亡き妻と瓜二つの女の正体、を解明すべく関係者へ聞き込みをするのだが、これがつまらない。また、お約束通りヒロインといい仲になるのだけど、甘ったるくてゲンナリ(笑)。このまま終わるのか……とガッカリしていたら、どんでん返し。驚いた。アルテにまんまとしてやられた。でもなぁ……どんでん返しへの持って行き方が下手で、納得しがたいんだよねぇ。そもそも、主人公がバカでなかったらこんな結末を迎えることはなかったわけだし。自分としては、なんともしっくりこない読後感でした。
(上京した際に読了していたものの、どう感想を書こうかと考えあぐねていたら半月経ってしまった……。)