『ミステリマガジン』2011年1月号を拾い読み

売り切れの書店が続出らしい『ミステリマガジン』2011年1月号(No.659)を拾い読み。
《特集/「相棒」特命係へようこそ》。水谷豊がインタビューで『デストラップ/死の罠』(アイラ・レヴィンの戯曲を映画化)が大好きだと言っていて嬉しかった。マイケル・ケインが圧倒的な存在感を見せている映画なんだよね。エッセイでは司城志朗の「杉下右京四つの謎」が出色。シーズンレビューは入門者向けの内容だけど、よく纏まっています。腹肉ツヤ子の漫画は不要。けっこう良い特集なのに、編集部の見識を疑う。
コリン・デクスター「奇妙な手紙の事件」The Case of the Curious Quorum(初出=ピーター・ラヴゼイ編“The Verdict of Us All”)
 〈イギリス探偵作家クラブ〉元会長H・R・F・キーティングから「小切手帳を盗んだ会員を探してほしい」という内容の手紙が、ルイス警部に届く。モースならどうするだろうと考えながら、ルイスはハサウェイ部長刑事と共に手紙の解読に挑む――。「ルイス警部」シリーズ。お遊びの掌編だから、特に感想はなし。TVドラマ『ルイス警部』が見たいよー。
ピーター・ラヴゼイ「剃刀ビル」Razor Bill(初出=短篇集“Murder on the Short List”)
 一八八二年冬。ロンドン警視庁は、娼婦を狙う連続殺人犯〈剃刀ビル〉の逮捕に躍起になっていた。クリッブ部長刑事の命令で、サッカレイ巡査は女装をして深夜の街を歩いていた。〈剃刀ビル〉をおびき出す囮である。コマーシャル・ロードでサッカレイは襲われ、男を逮捕するのだが――。「クリッブ&サッカレイ」シリーズ、唯一の短篇。オチが効いている好作。牧師が犯人だと思っていたけど、捻りも何もないよね。そういえば、〈現代短篇の名手たち〉のラヴゼイ短篇集ってどうなったんだろ。
石上三登志「トーキョー・ミステリ・スクール」第13回。60年代の「トーキョー」の映画館の状況と『国際諜報局』。ここにもマイケル・ケイン(笑)。吹替えを収録した第3作(最終作)のDVD発売は……ないだろうなぁ。
芦辺拓『七人の探偵のための事件』(第6回)
 “警視庁ホテル”のすぐ近くにある食堂喫茶《イストラカン》で、エネルギー補給を兼ねて“探偵会議”を開始した森江春策、獅子堂警部補、平田鶴子、レジナルド・ナイジェルソープ。そこへ突如現れたのは……。その人物を交え、名鳴町で起きた四つの事件の仮説を立て直していたところ、青年団員が駆け込んできて事件の発生を告げる――。探偵会議の冒頭(「見立て殺人」議論というか批判?)が面白い。前回(叙述トリック批判)といい今回といい、ホントよくやりますなァ(笑)。さて、“壇原真人”(本物か偽者か不明)が合流したわけですが、ミィキャラだとは……(CVは石丸博也をイメージしていたけど、肝付兼太に変更)。ドミノ事件の見当が全くつかないというのに、新たな事件(密室事件の模様)が発生して、もう何がなにやら。生死を気にしつつ、次回(3月号)まで頭を冷やすとしよう。
皆川博子『DILATED TO MEET YOU ―開かせていただき光栄です―』(第5回)
 治安判事サー・ジョンの尋問は続く。四肢切断の理由、胸のインクが意味するものとは。尋問から解放されたダニエル・バートン、エド、ナイジェルの3人は、一連の事件について考察をする……。時は遡り、一ヶ月くらい前。ネイサンはエヴァンズの邸に監禁されていた――。だいぶ話が進んで不明だった部分が明かされてきたけれど、真相を見抜くにはまだ情報が足りない。
安井俊夫「建築視線」第7回。ディーン・クーンツ『ハズバンド』雑感。
紀田順一郎「幻島はるかなり〈翻訳ミステリ回想録〉」第13回アーカムハウスから目録を取り寄せる。同人誌「ザ・ホラー」が休刊となる。幻想怪奇小説が知られる(定着する)まで、まだまだ色んなエピソードがあるんだろうね。

ミステリマガジン 2011年 01月号 [雑誌]

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デストラップ 死の罠 [DVD]

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パーマーの危機脱出 [DVD]

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ハズバンド (ハヤカワ文庫NV)

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