千澤のり子『シンフォニック・ロスト』(講談社ノベルス)★★★★★

北園中学校二年・泉正博は、吹奏楽部のホルン奏者。先輩でパートリーダーだった工藤麻衣子に好意を抱いていたが、三年生の引退日に彼女の本心を知り、失恋。彼は「先輩が卒業するまでにうまくなって、見返してやりたい」という一心で特訓を開始した。一年生の間で「吹奏楽部内でカップルができると片方が死ぬ」との噂が流れる中、吹奏楽部の大型行事のひとつである定期演奏会まで二ヶ月となった。『亡き王女のためのパヴァーヌ』を演奏することが決まり、泉は1stホルンを担当することになったがうまく吹けず、進路が決まり助っ人として復帰した麻衣子にポジションを奪われてしまう。翌日、彼は友人の福田と登校中、橋の下で工藤麻衣子の死体を発見する。この事件を皮切りに、吹奏楽部の人間が次々と死んで行き……。
千澤のり子嬢の第2長篇。前作は小学校が舞台でしたが、今作は中学校を舞台にした青春ミステリー。
今回も「やられたぁ〜!!!」というのが読後の第一声。彼女のライフワークである叙述トリックが使われているのは分かっているので注意していたのに、ものの見事に騙されました。最初から読み返してみると、仕掛けがあからさまに提示されていることに気付き、悔しいったらありゃしない(笑)。推理を組み立てつつ読んでいたのですが、自分の推理と真相の落差に愕然としました(俺、汚れすぎ……)。もっとシンプルに考えるべきだったか。
前作同様の読みやさに加え文章力がアップし、登場人物(帯に“草食男子ミステリー”とあるが、主人公の泉正博は体育館の裏に呼び出したくなるリア充野郎だと思う)が活き活きと描かれていて、楽しい時間を過ごすことが出来ました。
仕掛けを受け入れられるか否かで評価が違ってくるでしょうが、★5つ。是非ともご購読を。