『ミステリマガジン』2011年4月号を拾い読み

『ミステリマガジン』2011年4月号(No.662)を拾い読み。
高橋葉介「夢幻紳士 出張篇 座敷鬼」(書下ろし)
 とある料亭の座敷に出る様になった鬼を払うよう依頼された夢幻魔実也が見たものは――。「夢幻紳士」シリーズ最新作。ファンへのささやかなプレゼント。
高橋葉介「顔」
 顔に憑かれた女性は――。プロデビュー前に描いた短篇。無言劇が怖さを増幅させている。若い頃に本作を読んでいたら、絶対あの顔は夢に出てきた(笑)。
高橋葉介「街のキリギリス」(初出=《スターログ》日本語版1980年1月号/再録)
 街のキリギリスに憧れた少年は――。ノスタルジックな好篇。
フレドリック・ブラウン「おそるべき坊や」Armageddon(初出=“Unknown”1941年8月号/『さあ、気ちがいになりなさい』収録)
 シンシナティ市で起きた、恐るべき事件の顛末――。高橋葉介セレクト短篇。読了後に邦題の意味が分かるのが良いね。さすが星新一
芦辺拓「夢幻紳士対少女探偵」(書下ろし)
 昭和十二年、大阪。十八歳になった少女探偵は、女学生時代に書いた未来都市の物語に登場する黒衣と黒帽子の〈探偵〉と再会し――。高橋葉介トリビュート。高橋葉介ワールドと芦辺ワールドの見事な融合。ただのお祭りで終わるのではなく、現実へと切っ先が向けられるラストは流石。残念だったのは、目次で少女探偵の正体が明かされていること。誰なのかすぐに分かるけど、伏せるべきでしょう。
ジョー・ゴアズ「黄金のティキ像」The Golden Tiki(初出=《アーゴシー》1968年6月号)
 フランス領タヒチ島。フェロはアーネスト・ダンデラから、海に沈む黄金のティキ像の捜索を依頼される。高額の報酬にひかれ引き受けたが、相棒のマチュア・テアレアは島の迷信を信じており乗り気ではない。フェロは黄金像が目撃された珊瑚礁の周りを調査し、発見するのだが――。メンズ・マガジン(非パルプ)に発表された、「サルベージ屋フェロ」シリーズ第1作。うーん、捻りがなくてイマイチ。ダンデラの末路もベタだしなぁ。
皆川博子『DILATED TO MEET YOU ―開かせていただき光栄です―』(第8回)
 ジョン・フィールディング判事(サー・ジョン)が私室で寛いでいると、司法秘書官チャールズ・ヒッチンとテンプル銀行のヒューム氏の来訪を受ける。ヒッチンは怪文書の内容を否定するため、ヒュームは事件に関して知っていることを全て話すためだった。サー・ジョンがアン=シャーリー・モアと事件について話していると、ロバート・バートンが来訪。彼は事件との関わりを否定する。サー・ジョン邸を退去したロバートを尾行するデニス・アボットとアン。尾行中に新たな死体が現れ――。もう少しで終わるというのに、この展開には吃驚。ますます目が離せなくなったなぁ。
芦辺拓『七人の探偵のための事件』(第7回)
 事件発生の報を受け、土器屋家の蔵座敷に駆けつけた森江たちが見たのは、意識を失った霧嶺美夜と土器屋家当主・荘吉の死体。霧嶺は塀を越え中へ入る“怪しい人影”を見かけ敷地に入り、蔵座敷で荘吉の殺害に遭遇し毒ガスを吸い込んだという。レジナルド・ナイジェルソープが“糸とピンの密室”の痕跡を発見し、蔵座敷の密室の謎の解明に一歩近づく。夜になり《イストラカン》で会議を開いていると、獅子堂警部補が次萩署から戻ってくる。次萩署が荘吉の死を事故死として処理しようとしているのを知り探偵たちは憤るが、事件だとすると霧嶺の立場が悪くなる。土器屋家に間借りしている末井が漏らした『阿久津一家の件』の話になり、森江はある人物に話を振る――。やっと全員集合。少年探偵の女装は伝統(?)とはいえ、予想していなかったのでビックリした(笑)。本になったら該当箇所をチェックしよう。蔵座敷の密室トリックだけど、“糸とピンの密室”だとは思えないんだよなぁ。うーん、分からん。さて、物語はいよいよクライマックスに突入。七人の探偵は、名鳴町に潜むドス黒いものとどのように対峙するのか楽しみ。
高橋葉介「盗まれた一日」
 老婆の前に現れた怪盗ミルク。老婆は昔の一日を盗んでほしいと頼み――。「怪盗ミルク」第2話。傑作。
石上三登志「トーキョー・ミステリ・スクール」第16回。〈日活〉、裕次郎、「第二の男」小林旭鈴木清順監督作品との出会い。
安井俊夫「建築視線」第10回。ハメット『マルタの鷹』を建築視線で読む。
紀田順一郎「幻島はるかなり〈翻訳ミステリ回想録〉」第16回。『現代人の読書 本のある生活』を刊行、『明治の理想 反動ナショナリズムのシンボル』の執筆、糖尿病の検査入院で踏ん切りがつき退職する。

ミステリマガジン 2011年 04月号 [雑誌]

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マルタの鷹 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

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