『ミステリマガジン』2011年5月号を拾い読み

『ミステリマガジン』2011年5月号(No.663)を拾い読み。
トレヴェニアン「林檎の樹」The Apple Tree(初出=《Antioch Review》2000年春号)
 バスク地方に住む二人の老女の物語――。まぁ、ありがちな話。
ドン・ウィンズロウ「オールドメン・アンド・オールドボード」Old Men and Old Boards(初出=ビル・クライダー編“Damn Near Dead2”)
 日没。ビル・バーキは古いボードで波に挑む――。解説にもあるように、美しい老境小説。素晴らしい掌編でした。
ドン・ウィンズロウ「サンディ・ブルック」Sandy Brook(初出=T・ジェファーソン・パーカー編“Hook,Line&Sinister”)
 トラック盗難の常習犯ジェリー・ドノヴァンの望みは、サンディ・ブルックの“主”―三十センチほどの鱒―を捕らえること。明日にも三度目の刑期を務めるため出頭しなければならない彼は、サンディ・ブルックへ向かい“主”に挑む――。ラストが見えみえなのが残念だが、釣り小説の佳作。
笠井潔「二〇世紀探偵小説論をめぐる補註――権田萬治氏に答える」。3月号掲載の権田先生の公開質問への返答。なんだかなぁ、としか言い様がない。
芦辺拓「七人の探偵のための事件」(第8回)
 那々木神社の社務所に付属した集会棟。ここで七人の探偵の歓迎会が行われていた。発案者であり責任者の大戸島佐市郎と面会を果たしたのも束の間、山車蔵で新たな事件が起きる。山車改めで山車蔵を開けた鉢山吾市が危うく日本刀で串刺しにされかけたのだ。その後にも事件が起き――。次回で最終回なのに、着地点が全く見えない。名鳴町民全員が犯人ということはないだろうし、一体全体どうなるんだ? 今回の最後から考えるに、犯人は単独犯ぽいけど、うーん誰だろう。
石上三登志「トーキョー・ミステリ・スクール」第17回鈴木清順(日活)II、大藪春彦原作映画。「大藪春彦登場の、日本映画的な重要さ」が興味深かった。
安井俊夫「建築視線」第11回エドガー・アラン・ポー「モルグ街の殺人」を建築視線で眺める。
皆川博子『DILATED TO MEET YOU ―開かせていただき光栄です―』(第9回)
 突然、エヴァンズ殺害を自白したエド。ダニエル・バートンらが知る由もない殺害現場の〈トム・クィーン〉を知っていたが、何故知っていたのか頑として語らない。自白に疑問を持つサー・ジョンは〈トム・クィーン〉に赴き検証を行い、エヴァンズ殺しの真相を明らかにする――。デニス・アボットがナイジェルに誑かされていたのには驚いたけど、エヴァンズ殺しの真相はいたって普通。次回で最終回だが、残された謎の答え、そして物語のラストが楽しみ。
高橋葉介「虹の彼方に」
 知性、心、勇気を盗んだ怪盗ミルクの目的は――。「怪盗ミルク」第3話。いやぁ、今回も見事にしてやられた。傑作。
紀田順一郎「幻島はるかなり〈翻訳ミステリ回想録〉」第17回。畏友との交流の終わり。

ミステリマガジン 2011年 05月号 [雑誌]

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モルグ街の殺人・黄金虫 ポー短編集? ミステリ編 (新潮文庫)

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