『ミステリーズ! vol.91』を拾い読み

ミステリーズ! vol.91』(OCTOBER 2018)を拾い読み。
齊藤飛鳥「屍実盛(かばねさねもり)」
 寿永二年(1183年)六月、篠原の戦いで平家軍の殿軍(しんがり)をつとめていた武将が、手塚太郎金刺光盛(てづかのたろうかねざしのみつもり)に討ち取られた。九月、池殿流平家の家長・平頼盛は入京している木曾左馬頭(さまのかみ)源義仲に呼び出される。宣戦布告か死罪通告を覚悟したが、用件は意外なものだった。それは「首のない五体の屍の中から、長井(ながいの)斎藤別当実盛を見つけ出してほしい」というものだった――。
 第十五回ミステリーズ!新人賞受賞作。実盛の屍を断定するシンプルな方法よりも、この裏で仕組まれていた大胆な企みに舌を巻いた。急(解決編)の冒頭であからさまな形でヒントが書かれていたのに、種明かしされるまで気付かず一本取られてちょっと口惜しい。次作にも期待。
市川憂人「赤鉛筆は要らない【問題編】」
 高校生の九条漣は、写真家の河野忠波瑠が殺された事件に遭遇する――。
 15年の時を経て復活した「懸賞付き犯人当て小説」企画の第1回。
北原尚彦「ホームズ書録 番外編 ライヴァルたちの饗宴」
 三津木春影によるR・オースチン・フリーマン〈ソーンダイク博士シリーズ〉の翻案(呉田博士ではなく田暮博士)がまだあったとは! 中編"The Dead Hand"(1912)を長編化した"The Shadow of the Wolf"(1925)、論創社から翻訳されないかなぁ。また、甲賀三郎『池水荘綺譚』が翻案であり、ネタ元を特定するという新発見も。

ミステリーズ! Vol.91

ミステリーズ! Vol.91

The Shadow of the Wolf (Dr Thorndyke) (English Edition)

The Shadow of the Wolf (Dr Thorndyke) (English Edition)

池水荘綺譚 (1956年)

池水荘綺譚 (1956年)