深谷忠記『AIには殺せない 東京~出雲殺人ライン』(光文社文庫)★★☆

出雲市駅に到着した寝台特急サンライズ出雲」のシングルデラックス(A1)で、衆議院議員・夏目征太郎の妻の冴子の絞殺体が発見された。十一日後、港区台場にある東京ベイスカイホテルの一室で、越裕美の刺殺体が発見される。警察の捜査で二人は女子大時代からの友人で、裕美の夫で茨城県会議員だった越要が冴子との不倫が原因で自殺していたことが判明。捜査線上に二人と面識がある弁護士の加賀美峻介が浮かぶが、二人を殺した証拠はない。加賀美が岡山で「サンライズ出雲」を降り新幹線で東京に戻った確証を掴んだ矢先、奥多摩の谷底に転落した車の中から彼の遺体が発見される――。
壮&美緒シリーズ、「殺人ライン」シリーズ最新作。
まず最初に、タイトルについて。タイトルと内容がリンクしていないので、『東京~出雲殺人ライン』でよかったと思うんだけどなぁ。
次に、内容について。本作では事件が3つ起き、夏目冴子殺しに重点が置かれています。アリバイトリックと冴子を絞殺する際に用いられたトリックの2つが問題になるのですが、前者は普通、後者は初期の逆転シリーズには遠く及ばない(と書けば予想できますよね?)もので、「うーん」という感じです。犯人が自身を容疑圏外に置くためにとった行動はなかなか良いのですが、トリックの後始末が杜撰すぎるのが大きなマイナス。また、越裕美殺しと第3の事件の詰め手がないのはいただけません。
シリーズのファン以外は読む必要はありません。