短編3作

千澤のり子嬢の短篇3作。一部、背景と同色にしています。
羽住典子「黒いすずらん」(探偵小説研究会=編著『CRITICA』vol.10掲載)
※『謎々 将棋・囲碁』(角川春樹事務所)収録
 放火で両親を失い、六歳の頃に札幌に住むおばあちゃんに引き取られたあたし。囲碁の先生であるおばあちゃんに囲碁を教えられるが、一回も勝てない。十歳になったある日、事件が起きる――。
 囲碁ミステリの佳作。事件が起きた要因と構図は(ちょっとした知識が必要となるが)あからさまな形でヒントが書かれているため分かりやすい。本作のキモはそれと密接に絡んだ“あたしの秘密”で、なかなか上手く機能している。
羽住典子「愛しの我が子」(探偵小説研究会=編著『CRITICA』vol.11掲載)
 川津家の代理と名乗る久住の訪問を受けた香澄が語ることとは――。
 ラスト数行にゾッとするサスペンスの好編。香澄の息子死に追いやったのは久住かと思ったが、考えすぎだった(笑)。
羽住典子「半分オトナ」( 探偵小説研究会=編著『CRITICA』vol.13掲載)
 二分の一成人式を中止にする方法とは――。
 社会派の作品であり、作者の作風(芸風?)と見事にマッチした現時点でのベスト短篇。最終章で明かされる事実に驚いた。また、ラスト一行がとても良い。

謎々 将棋 囲碁

謎々 将棋 囲碁

CRITICA 第11号 特集◆海外古典ミステリ再見

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