山本巧次『江戸の闇風 黒桔梗裏草紙』(幻冬舎時代小説文庫)★★★

常磐津の師匠・文字菊ことお沙夜は、裏の仕事師の顔を持つ若い女性。彼女は弟子の両替商「大高屋」から磯原藩が八千両を貸してくれる相手を探しており、材木商「甲州屋」が手を挙げていると聞く。隣の住人で指物職人の彦次郎から甲州屋に纏わる噂を聞いたお沙夜は興味を持ち、彼に調査を頼む。時を同じくして、隣の長屋に住む浪人・鏑木左内から厄介事を持ち込まれたお沙夜。兄の借金のカタに岡場所に売られようとしていたお万喜を長屋の大家の依頼で助けたが、この後のことを考えておらず彼女の所に連れて来たという。お万喜の様子がおかしいことに気付き問い詰めると、兄妹で岡場所を営む勘造の金を盗むための芝居だったと聞き、お沙夜は呆れる。数日後、お万喜の兄・亮吉の死体が発見され、闇に潜む悪党の存在を知ったお沙夜は仲間たちと動き出す――。
山本巧次、初の本格時代小説は「裏稼業もの」。
キャラクターはいいし、ストーリーもまずまず。
解説で細谷氏は〈必殺シリーズ〉を引き合いに出しているが、個人的には〈隠し目付シリーズ〉(詳しく言うとシリーズ2作目『江戸特捜指令』)っぽさを感じた。
主人公のお沙夜には大きな秘密があるようなので、続巻が出ることを祈りたい。