佳多山大地『トラベル・ミステリー聖地巡礼』(双葉文庫)★★★★

『小説推理』隔月連載の「トラベル・ミステリー探訪」(2016年1月号~2019年3月号・全20回)に、パイロット版のエッセイ「鉄道で行くローカル・ミステリー・ツアー」(『ミステリマガジン』2013年12月号掲載)、小論「トラベル・ミステリーの定義と過去未来」、「本邦トラベル・ミステリー 里程標的作品リスト」を収録した紀行文集&ブックガイド。
トラミス愛が感じられて、面白く読んだ(佳多山氏と嗜好がかなり被っている気がした)。
トラベル・ミステリーの事件現場を踏査し、作品の〝魅力の真相〟を解き明かさんとする「探偵鉄」である佳多山氏による本編とエッセイは、「自分も行ってみたい」「紹介作を再読したい」と思わせる魅力に溢れている。中でも、笹沢左保『空白の起点』がテーマの第9・10回、江戸川乱歩押絵と旅する男」がテーマの第17・18回、2つの前後編回は「探偵鉄」の本領が発揮された素晴らしい内容。作品紹介はネタバレなしで行われているものの、犯人や重要な展開を明かしている箇所があるのが少々気になった。まっさらな状態で紹介作を読みたい方は、先に小説を読んだ方がいいだろう。

〈取り上げられた作品〉
寝台特急ブルートレイン)殺人事件』『死のある風景』『出雲伝説7/8の殺人』『時間の習俗』『動脈列島』『後鳥羽伝説殺人事件』『田沢湖殺人事件』『ブラックスワン』『空白の起点』『寝台特急「出雲」+-の交叉』『船富家の惨劇』『JR最初の事件』『マジックミラー』『殺意の風景』『山口線〝貴婦人号〟』「押絵と旅する男」『天竜峡殺人事件』『義経号、北溟を疾る』、以上18作。
原型エッセイで取り上げられたのは『〈移情閣〉ゲーム』『点と線』『列車消失』『奇想、天を動かす』『黒百合』の5作。
(2019/9/17記)