阿井渉介『北列車連殺行』(講談社文庫)★★★

金沢発上野行きの寝台特急「北陸」から投げ出されたと思われる石の鉢を抱えた死体。ビルから転落死した男は燕の巣のかけらを握り、緑の炎に包まれていた。夜な夜な竹が光るという竹林には逆吊りの死体。「竹取物語」になぞらえた連続殺人事件に、牛深・松島コンビが挑む――。

※ネタバレ箇所を背景と同色にしています。
1988年3月刊。再読。
トラベル・ミステリーであり奇想ミステリでもある〈列車シリーズ〉の第1作。
緑の炎や光る竹という不可思議現象が事件に彩りを添えており、前例はあるが操りによる将棋倒し殺人という事件の構図はなかなかよくできているうえ、トンデモトリックも炸裂していて楽しめる(ここまで手の込んだことをする必然性に疑問符が付くけれど)。
地味なので後続作のぶっ飛びっぷりを知っていると物足りなく感じるのは仕方のないところだが、手堅くまとめられているのでシリーズ入門として読むのに最適だと思う。
(2019/10/8記)

北列車連殺行 (講談社文庫)

北列車連殺行 (講談社文庫)