深谷忠記『成田・青梅殺人ライン』(光文社文庫)★★☆

青梅市鹿沼神社の参道脇にある児童遊園地で、私立共友学園の三年生・鳴神伸一が殺された。共友学園は共栄館大学の提携校。推薦枠が三名しかない医学部志望だった彼は、元恋人で推薦枠を争う篠口礼子の試験不正を探っていた。警察は彼女の家庭教師をしている東大生・黒沼敏を捜すが、行方が掴めない。そんな中、昭島市の市立昭和公園で西京大生・荻村康彦の毒殺死体が発見され、彼が黒沼の名で礼子の家庭教師をしていたことが判明する。警察は容疑者を試験不正に関わっていると思われる礼子の祖父・正之助、母・志津江、共友学園の英語教師・島内吉郎の三人に絞って捜査に当たり、アリバイが崩れた島内の聴取を行おうとした矢先に事故死してしまう。島内の犯行との結論が下され捜査は終了したが、島内の妻・京子から犯人は他にいると訴えられた甥の進藤峻は再調査を開始した――。
1984年11月刊。深谷にとって初の一般向けミステリーとして刊行された第4長編。
学園ミステリーの第一部、アリバイ崩しの第二部という構成で、青春小説の風味も盛り込まれている……と書くと面白そうに感じられるが、盛り上がりに欠ける地味なストーリーで面白くない。
事件の構図に見るべき点があるものの、アリバイトリックで使われている機械トリックが第9長編『「札幌・仙台」48秒の逆転』同様に酷いものなので、白けることこの上ない。
「逆転」シリーズのプロトタイプとして、深谷ファンだけが読めばいい作品だと思う。
(2020/01/07再読)

成田・青梅殺人ライン (光文社文庫)

成田・青梅殺人ライン (光文社文庫)

  • 作者:深谷 忠記
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 1988/10
  • メディア: 文庫