津村秀介『仙山線殺人事件』(BIG BOOKS)★★☆

将棋の世界では、賭け将棋で生計を立てている者のことを「真剣師」と呼んでいる。宝塚温泉と仙台・天童で同日に真剣師の大会が開催されることになり、横光裕治と三木正利は宝塚温泉の大会に、戸倉元太と久我悦雄は仙台・天童の大会に出場するため、横浜から二手に分かれて出発した。大会二日目の朝、仙台のホテルで久我の、山形のホテルでは戸倉の絞殺体が発見される。共通した状況で同一手口の犯行、そして凶器のベルトから二人の指紋が検出されたことから被害者同士が殺し合ったように見えた。が、仙台の事件の凶器から第三の指紋が検出、ベッドの下からは折畳み傘が発見され、容疑は宝塚の大会に出場した真剣師に向けられる。将棋絡みの事件に興味を惹かれ調査を開始した浦上伸介は、鉄壁のアリバイと動機の謎に挑む――。
〈浦上伸介シリーズ〉長編第3作(第8長編)。
動機(というか事件の背景)は『山陰殺人事件』を読んだ人であれば、すぐにピンとくると思う。
「被害者同士が殺し合ったように見える二地点の殺人」というシチュエーションで興味を引くのもいいし、指紋と鉄壁のアリバイの提示方法もいいが、それを活かしきれていないのが問題(津村らしいと言えるが)。指紋の移動方法やアリバイトリックは捻りがなく、詰め手も都合が良すぎる。凡作。
(再読)