草川隆『無縁坂殺人事件』(廣済堂文庫)★★

「無縁坂で自殺した主婦には多額の保険金がかけられている。亭主の先妻も海で事故死していて、多額の保険金が下りているはずだ。関心があったら取材してみろ」――『週刊クール』の新前編集者・白井浩介は匿名の密告電話を受けた。調べてみると、無縁坂で青山博の妻・明美が投身自殺をしていた。加藤編集次長から取材を命じられた彼は、刑事の娘で女子大生の永持羊子と共に〝推理ゲーム〟を開始した。2人は銀座の喫茶店で彼と会っていた謎の女がK出版社員・岡崎和江であることを突き止めアパートを訪ねると、彼女の刺殺体を発見。青山への疑いがさらに深まるが、2人は事件を再検討して青山は何者かの罠にかかったという視点に立ち〝推理ゲーム〟を再開。青山の先妻の交友関係から意外な人物が浮かび上がった矢先、新たな事件が起きる――。
『個室寝台殺人事件』(86年7月)より前に執筆された、草川のミステリー第2長編。
意外な犯人と密室殺人に挑む姿勢は良いが、犯人はともかく密室の方は「酷い」の一語に尽きる。トリックはしょうもないものだし、理由は最終章で犯人が告白しているものの説得力に欠ける。
作者の本格ミステリー愛が窺える(クリスティの大ファンなのかも)セリフや描写が微笑ましいので、愛すべき駄作と評するのが適切だろうか。
余談だが、山前譲による解説に面白いエピソードが書かれているので、解説だけチェックしてみてもいいかもしれない。
(再読)

無縁坂殺人事件 (広済堂文庫)

無縁坂殺人事件 (広済堂文庫)

  • 作者:草川 隆
  • 発売日: 1990/06/01
  • メディア: 文庫