吉村達也『修善寺温泉殺人事件』(ケイブンシャノベルス)★★

山越精器のOL渡瀬里佳子の扼殺体が代官山のアパートで発見された。彼女の顔と両手はウルシでかぶれており、ウルシが混入されていると知らずに愛用の液状石鹸を使い、洗い流そうとした所を犯人に襲われたと思われる。二日後、伊豆・修善寺温泉の露天風呂「独鈷の湯」で沙織の溺死体が発見され、修善寺に向かった渋谷署の夏目邦雄巡査部長と息子で警視庁捜査一課の夏目大介警部は、二十一年前に起きた悲劇を知ることになる――。
〈夏目捜査官親子シリーズ〉第2作にして、〈温泉殺人事件シリーズ〉第1作。
〈温泉殺人事件シリーズ〉は志垣警部と和久井刑事のコンビが活躍するシリーズとして知られるが、最初期は『黒白の十字架』(1992年6月)で初登場した夏目捜査官親子が活躍するものだった。
吉村ミステリーらしく〝心理〟に焦点を当てた作品なので、里佳子殺しに関する謎解きに期待してはいけない(評価できるのは、事件の様相が変化する点くらい)。
「親の情・子の情」をテーマにしており、これが事件の背景と動機にリンクする構成になっているが、上手く噛み合っていないように思う。
(再読)