津村秀介『京都着19時12分の死者』(講談社文庫)★★☆

下り新幹線ひかり253号での中年女性毒殺事件、京都のホテルでの前科四犯のヤクザ者の毒殺事件、2つの現場から同じ渦状紋が検出された。中年女性が急行アルプス5号で信濃大町へ向かっていたことが判明し、捜査のため上京した堀内部長刑事を待っていたのは新たな毒殺事件だった――。
ノンシリーズの第10長編で、「死者」シリーズ第2弾。いつも通りの津村作品だが、このジャンルの犯人の大変さが分かるという意味では凄い作品。
本格ミステリの犯人は苦労が絶えない。時刻表トリックを使う場合は体力だけでなく金がかかるし、ダイヤの乱れに気を揉むことになる。本作の犯人は2日間で3人殺すために時刻表トリックと写真トリックを用いてアリバイ工作を行う。時刻表トリックはたいしたものではなく、指紋を残すという大チョンボを犯している(ついでに言うと、青酸の入手方法も杜撰)が、全てを賭けた最後の砦である写真トリックが凄い。あんなこと、よく思いついて実行したよなぁ……(笑)。第3の殺人に絡むあれこれは笑いが止まらないので、『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』(原作=天樹征丸金成陽三郎さとうふみや/漫画=船津紳平)のような形で漫画にしてほしいくらい。『火サス』で映像化されているのだけど、写真トリックはあのままだったか思出せないので、見直してみなければ。