草川隆『L特急「あずさ」の殺人』(FUTABA NOVELS)★★☆

新宿駅に十九時二十五分に到着したL特急〈あずさ18号〉で美容整形医・望月耕一の服毒死体が発見された。時間は遡って午後六時頃、長野県松本市で小学生が青酸入りジュースを飲んで死んだため、無差別殺人として捜査が開始されたが、望月が浅間温泉の喫茶店で女優の瀬川雅子と会っていたことが発覚し無差別殺人偽装の線が浮上。彼女は同席したことを認めたが彼はファンだったと供述、アリバイがあるため彼女に犯行は不可能だった。望月の旅行バッグをすり替えたハコ師が判明するが、彼の毒殺死体が密室状態のマンションの部屋で発見される――。
草川の第3長編。『個室寝台殺人事件』(1986年7月)『無縁坂殺人事件』(1987年2月)では最終章で犯人視点になる構成がとられていたが、本作は後半からある人物の視点と捜査パートが交互に入り、最終章は刑事と犯人が取調室で対決する構成となっている(犯人の鬼畜外道&往生際の悪さがとても良い)。
基本トリックしか使われていないが、青酸を飲ませた方法とアリバイトリックで最後まで引っ張ろうとした努力は買えるし共犯者の意外性もまずまずだが、第一の事件での行動がある記述と矛盾してしまっているのは大ミス。叙述トリックをやりたかった可能性が高いが、しっかりと見直してほしかった。
因みに、本作は半陰陽(=ふたなり)が事件に絡むがナニなシーンはないので期待しないように。