大谷羊太郎『東京青森夜行高速バス(「ラ・フォーレ号」)殺人事件』(カッパ・ノベルス)★★☆

札幌での結婚式に出席後、友人二人と世田谷の自宅に戻った淵川志郎は妻・真佐子の刺殺体を発見する。一方、淵川らに同行して夜行バスと列車を乗り継ぎ札幌へ行った紺野綾子は、婚約者・副島優樹の行動に不安に駆られていた。事件の捜査にあたる警視庁捜査一課の河津班は容疑者を淵川と副島の二人に絞り、八木沢警部補はある人物に疑惑の目を向ける――。
大谷が本格的に乗り物を使ったアリバイ崩しに挑んだ長編。
夜行高速バスを使った新機軸のトリックを期待すると肩透かしを食うが、心理の盲点を突いた電話トリックはそこそこ成功していると思う。殺害方法は「そんなもん分かるか!」といういつもの大谷流機械トリックが炸裂。いつものことながら、よく考えますなぁ……(笑)。
あるアクシデントにより事件が複雑になるのは上手いと思うし、夜行高速バスを使った理由も一応納得できるが、手紙と大通公園の謎に無理矢理感が拭えないのは残念なところ。
気合いが空回りした作品と言えるだろうか。