鮎川哲也・西村京太郎・夏樹静子・山村美紗/佳多山大地=編『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編〉』(双葉文庫)★★★★★

戦後を代表するミステリー作家4人の短・中編を収録した鉄道ミステリ・アンソロジー
 鮎川哲也「早春に死す」
 西村京太郎「あずさ3号殺人事件」
 夏樹静子「特急夕月」
 山村美紗「新幹線ジャック」
以上、4編を収録。

前半2作はアリバイ崩し。
鮎川哲也「早春に死す」は変化球。物証の矛盾から構図を反転させる手並みが素晴らしい作品。
西村京太郎「あずさ3号殺人事件」ストーリーテリングの妙が冴え渡る正統派。密室トリックは酷くて論外だが、アリバイがアリバイ崩しの手掛りになる展開が見事。
後半2作は〝ミステリーの女王〟対決。
夏樹静子「特急夕月」はアクシデントの発生により右往左往する男の殺人喜劇。シニカルなラストが堪らない。
山村美紗「新幹線ジャック」はトレインジャック物。巧妙な計画に舌を巻き最後の台詞に唸る、山村美紗の本領が発揮された作品(サスペンス短編、本当に上手い!)。編者解説でミスが指摘されているが、山前譲氏も指摘していた記憶がある。

本書はド定番の傑作だけを収録した凄いアンソロジーで、この思い切りの良さは凄い。収録作が少ないのが不満だが(島田一男が収録されていないのはどうなんだろう)、買いの一冊であるのは間違いない。