辻真先『黄昏(トワイライト)の殺人特急』(ケイブンシャノベルス)★★☆

雑誌のグラビアで見た水仙に魅かれ越前岬へ行くことにした画家の佐伯城介は寝台特急『北陸』で初恋の人・五月道江とそっくりな女性を見て衝撃を受ける。翌日、『トワイライトエクスプレス』で道江との関係を終わらせる原因を作った郷原が心中したと知る。しかも心中相手は『北陸』で見た女性だった――。
「三ツ江」「四谷」「東西大学」と辻ワールドお馴染みの企業と大学、辻ワールドの名物キャラクターが登場するノンシリーズのトラベル・ミステリー。
暗く硬い雰囲気で始まった物語が某キャラクターの登場で雰囲気が崩れてしまっている(便利なキャラクターなので、登場させたのも分かる)が、中盤で「北海道を走行中の『トワイライトエクスプレス』にいた人間は『北陸』に始発の上野から乗車できるのか?」という謎を解明したと同時に新たな謎を提示して盛り上げているのは上手い。
しかし、そこからは失速の一途で、腰砕けな真相にガッカリ。甘いラストがいいだけに残念でならない。

※東西大学は東京一郎が学長を更迭され、学内に粛清の嵐が吹き荒れんとする状況なのだけど、〈秀介ファイル〉シリーズの時期と矛盾が……。