『幻想と怪奇 6 夢境彷徨 種村季弘と夢想の文書館』(その2)

引き続き、『幻想と怪奇 6』をちびちび読んでいる。

●書き留められた夢
エドワード・ルーカス・ホワイト/夏来健次=訳「セイレーンの歌」
メドルス号でボルティモアからリオ・デ・ジャネイロへ向かったわたしは耳が聞こえない一等航海士のウィルソンと親しくなり、彼がセイレーンを見たことがあると知り驚く――。
新訳。第二短編集の表題作。
アンナ・キングズフォード/田村美佐子=訳「断崖館―ある幽霊物語」
クリスマス休暇を過ごすため、わたしは学生時代の旧友が住む北ウェールズへ向かった。最寄り駅で下車するも最後の車が出発した後で、友人宅へ歩いて向かうことに。雪が降ってきたため小屋に駆け込み、老夫婦の勧めで近くの館に泊まることになった――。
ゴシック・ホラーの佳作。

夢魔は目醒めのうちに
ヘンリー・S・ホワイトヘッド/植草昌実=訳「影」
モーリス老人の家に移って一週間が過ぎた頃のこと、わたしは就寝前に寝室で影を見た。家具の配置が変わっていることに驚き電気をつけると、元に戻っていた。この現象を明確に捉えようと観察を始めたわたしは、前の住人のモーリス老人の最期に秘密があると予想する――。
東南アジア綺譚。PI小説の雰囲気がある。主人公、メンタル強いなぁ(笑)。
マイクル・マーシャル・スミス/嶋田洋一=訳「闇の国」
実家に帰ったおれは、寝室の模様替えをしていた。頭がくらっとして吐き気したため横になり、目覚めると――。
英国幻想文学大賞受賞作の改稿新版。
ルールは単純だが理由が一切不明で、じわじわ追い詰められる怖さが良い。終盤のトンカチ合戦にちょっと笑ってしまった。
ラムジー・キャンベル/植草昌実=訳「悪夢」
ローレンスが昔よく行ったところがある場所を探すため、ローレンスとヴァイオレットの夫婦はストレイダーズ・ハルトへ向かったが――。
原題通り〝悪夢〟としか思えない顛末が語られる作品。何が何やらで、考察しがいがありそう。「闇の国」もそうだが、理由が不明でじわじわ追い詰められていくのは本当に怖い。