『幻想と怪奇 6 夢境彷徨 種村季弘と夢想の文書館』(その3)

『幻想と怪奇 6』、終盤に突入。

ショートショート
井上雅彦「メデュウサ」
連日、床の上を這うように歩く夢を見る女。連日、美女から「あなたに会いたい」と求められる夢を見る男。二人の夢が交差する時――。
「そういうことだったのか!」と膝を打つラスト。
荒居蘭「金の鋏」
元ガイドが語る、金の鋏にまつわる黄金郷の伝説とは――。
冒頭の問いが終盤で反復され、切っ先が向けられるラストが上手い。元ガイドの話を聞いている「わたし」の正体にニヤリとさせられた(映画の原作になったノンフィクション、面白いらしいので読んでみたい)。

《エッセイ》
斜線堂有紀「毎夜死ぬ私達が、現実上手になるために」
明恵上人の『夢記』から始まり、映画『恋愛上手になるために』へ展開するエッセイ。『恋愛上手になるために』ってこんな映画だったのか。観なければ。

●夢見る人々
フリッツ・ライバー若島正=訳「アルバート・モアランドの夢」
チェスで生計を立てているモアランドから毎晩チェスのようなゲームの対局をする夢を見ると聞いた私。深夜、彼の部屋に忍び込んだ私は彼の寝言を聞いて恐怖を覚える――。
フェアリーチェス綺譚。あの駒を取ったために……というのは明らかだけど、そこからどうしてああいうことになったのかは色々と考えられる所。「1938年の出来事」というのは重要だったりする?(深読みかな?)
ローラン・トポール榊原晃三=訳「静かに! 夢を見ているから」
クリストフ・アルノは街の人たちが彼の夢を見ていることを知る。広告代理店の営業マンからは夢に商品を登場させてくれと頼まれ、困惑しつつも契約するが――。
再録。〝見た夢が他人に見られている〟というシチュエーションを上手く使っていて、見事なオチ。落語化できるのでは。