井上ねこ『花井おばあさんが解決! ワケあり荘の事件簿』(宝島社文庫)★★★

長野県平野市にある独居老人専門アパート「若鮎荘」(通称「ワケあり荘」)に住む元小学校教諭の花井朝美が様々な事件に首を突っ込み、解決していく連作集。

「罪なき咎人」
水田で元小学校教諭・松村武雄の焼死体が発見された。警察は自殺として処理する方針に傾いているようだが、納得できない花井は管理人の若泉歩美を助手にして調査を開始する――。
「見えない腕」
101号室の住人・鈴木ふみ子が落ち葉掃除をしている最中に河道に転落し、重傷を負った。現場に居合わせ通報したのが最近夫を事故で亡くした奥沢智絵と知り、花井は歩美を伴い調査を開始する――。
「ワケあり荘探偵団」
101号室の新しい住人・佐藤昭人が近所の空き家で殺された。元刑事で102号室の住人・根橋祐太朗の提案でワケあり荘の住人たちは探偵団を結成し、犯人を誘き出すため罠を仕掛ける――。
「石仏は見ていた」
市民病院の駐車場に駐車していた車で、塩尻市在住の米田義弘が死んでいた。警察は様々な可能性を探りながら捜査を進める方針をとる。一方、歩美は新聞の埋め草記事で読んだ「延宝の石仏の怪事件」に興味を持ち、調査の過程で35年前に同様の事件が起きていて殺人事件が絡んでいたことを知る――。

収録された4編は主にホワイダニットに焦点を当てており、苦味のあるストーリーでなかなか面白い。後半2話で花井おばあちゃんを"探偵の宿命"と対峙させて物語を盛り上げており、エピソードを跨ぐ形で張られた伏線が連作としての完成度を高めている。花井おばあちゃん&歩美コンビの物語、もっと読みたいですね。