(ライトな)フェアリー短編コンクール 第9番 解答

(ライトな)フェアリー短編コンクールに17名の方から解答をいただきました。ありがとうございました。
また、投稿してくださった15名のみなさんもありがとうございました。

◆参加者 16名(敬称略)
神無太郎、上谷直希、せら、藤原俊雅、駒井めい、小林看空、青木裕一、神無七郎、springs、馬屋原剛、変寝夢、たくぼん、真T、さんじろう、神在月生(以上15名、到着順)+占魚亭

◆解答者 17名(到着順、敬称略)
若林、神無七郎、たくぼん、冬眠蛙、金少桂、変寝夢、風みどり、青木裕一、藤原俊雅、駒井めい、神在月生、菊田裕司、雲虚空、上谷直希、Pathfinder、せら、一乗谷酔象


第9番 たくぼん作
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【ルール】
・キルケ
 駒が取られると最も近い将棋での指し始め位置に戻される。戻せないときは持駒になる。
 (補足)
 戻り方等は以下の細則に従う。
 1) 成駒は生駒になって戻る。
 2) 戻り位置が埋まっていたり、二歩になったりする場合は戻れない。
 3) 駒取り時、駒が戻るまでを一手と見なす。
 4) 金銀桂香(成駒も含む)が5筋で取られ、複数の戻り先候補がある場合、戻る位置を選択できる。
・アンチキルケ
 駒取りがあったとき取った方の駒が、最も近い将棋での指し始め位置に戻される。
 (補足)
 戻り方等は以下の細則に従う。
 1) 成駒は成ったまま戻る。
 2) 戻り位置に駒があったり、自玉に王手が掛かったりするため、戻れない場合は戻らない。
 3) 駒取り時、駒が戻るまでを一手と見なす。
 4) 金銀桂香(成駒も含む)が5筋で駒取りを行い、複数の戻り先候補がある場合、戻る位置を選択できる。片方にのみ戻れる場合は強制的にそちらに戻る。

【a)キルケ協力詰 手順】
  a) 31角成、23玉、32馬、同銀/88角、33角成、12玉、22馬まで7手。
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【b)アンチキルケ協力詰 手順】
 b) 31角成、33玉、42馬/88馬、23玉、33馬、12玉、13銀まで7手。
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【c)協力詰 手順】
 c) 31角成、23玉、41馬、32飛、同馬、13玉、14飛まで7手。
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【正解】a)10名 b)11名 c)15名

【作者解説】
 短編は苦手でなかなか作品の案が思いつかなかったが、ある方のtwitterのつぶやきでキルケとアンチキルケのルールの違いのツインってありましたか?というのが目に入りました。これまで無かったよなあと思いましたが、それではちょっと考えてみようかということで考えてみました。論理的に攻めても全然上手くいかず「ライトな」という縛りもあるのでこれは難物だと結構時間がかかりました。
 何といっても1つのルールが出来ても、もう一つのルールの手順では配置駒のいくつかが不要になるという事態が多発。配置駒全てにどのルールでも必要駒とするのはかなり難しかったです。
 というわけで完成はしたものの、手順自体があまり面白くないという点はいかんともし難く。イマイチ感満載でした。

 a) のキルケ協力詰の手順は、32馬の一手が唯一の魅せる手で、同銀と取らせることで角を88に復活させつつ銀の22への利きを無くしています。詰上り横一線はちょっとしたおまけです。
 b) のアンチキルケ協力詰の手順は、王手を続ける順は、31角成、33玉しかないスタートから3手目どちらの銀を取るかが少しの考え所です。しかし42地点を空けないとアンチキルケでは定番の51地点を抑えることができないので42馬/88馬が正解です。33馬で51を抑えて13銀まで。慣れていないと詰んでいないような詰上りですが同玉と取れません。
 c) 実はa,bのツインとして創作した本作ですが、たまたま協力詰でfmにかけた所唯一解が出てビックリ! 手順のつまらなさには目をつぶってc)としました。定番の飛合が出るだけですが、配置駒に不要駒が無いのは良しとしましょう。
 結果3作とも初手31角成に統一できて3手目が全て異なるように出来たのだけはアピールポイントになったでしょうか。
 ここからはおまけですが、実はc)の手順は、安南協力詰、安北協力詰の7手詰でも成立します。安南、安北らしい順ではないのでダメですけど。
 それとPWC協力詰3手もいけます。手順は、33角成 31玉 32馬 迄 3手です。但しこの順は受方52飛が不要駒となります。これらを全て書き出しますと、

 a)キルケ協力詰 7手
 b)アンチキルケ協力詰 7手
 c)協力詰 7手
 d)安南協力詰 7手
 e)安北協力詰 7手
 f)PWC協力詰 3手

となるわけですが、c,d,eは同一手順、fは不要駒ありで結局外さざるをえませんでした。c)も外したほうがよかったかもしれませんが判断に迷うところです。

★たくぼんさんの作品。同一図でルールが異なるツインです。2つは縫田光司作などが発表されています(私も何作か作りました)が、3つは記憶にありません。ルールの数は忘れたけれど金子清志さんも発表していた記憶があったので調べてみたら、5つでした。
 ツインらしい主張があればよかったですが、それぞれのルールらしさは出ていると思います。
 ちなみに、作者解説で触れられているTwitterのツイートはSinatraさんのツイート(2021年6月16日)で、キルケとアンチキルケのツインはsprings作がありました(紹介3作の手順は末尾に)。

 縫田光司作
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 a) 安南協力詰 3手
 b) 対面協力詰 3手
 (『WFP』第39号)
この号には縫田さんのツインがもう1作出題されているので、興味のある方はチェックしてみてください。

 金子清志作
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 a) ばか詰 3手
 b) 打歩ばか詰 3手
 c) 安南ばか詰 3手
 d) 対面ばか詰 3手
 e) 背面ばか詰 3手
 (『詰パラ』2011年1月号)

 springs
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 a) キルケ協力詰 3手
 b) アンチキルケ協力詰 3手
 (「詰将棋メーカー」2020年10月2日)

【短評】
若林さん
 作図技術を楽しむ作品。手順が薄目なのは致し方なし。

神無七郎さん
 a)の詰上りが「一」になるので、これが創作の起点でしょうか?

たくぼんさん
 手順自体がも少し派手さが欲しかったですね。

冬眠蛙さん
 bが詰み形が見えず苦戦しました。

金少桂さん
 配置を変えずに異なる3ルールで同手数解が成立するのがすごい。
 特にa)とb)は詰みにルールの特長が出ていて良い。
 欲を言えばc)も12で詰んでほしかった。

変寝夢さん(aのみコメント)
 a) 頭3手は判ったのだが、12玉ばかり考えてしまった。
 b) アンチキルケは駒取りの王手が難しいので、それがヒントになった。
 c) ここで裏筋とは参った。

風みどりさん(cだけ解答)
 トリオとは凄い。

青木裕一さん
 手順対比は?だが、3つのルールで手順を成立させるのが上手いです。

駒井めいさん
 3種類のルールが同一図で成立するとは驚き。

菊田裕司さん
 特にツインらしさはないし初手がすべて同じなのも味悪だが、キルケ・アンチキルケの入門用か。

雲虚空さん
 創作過程が気になるところですが、やはりあぶり出しのa)が最初にできたのでしょうか?

上谷直希さん
 統一が取れているようにも見えるが、厳しい言い方をしてしまうと「なんとなく似ている手順が並んでいる」ような印象も否めない。

一乗谷酔象さん(cだけ解答)
 同形で3ルールのトリプルなら素晴らしい。解けてませんが。

【作者予想】
駒井めいさん
 作者当て:藤原俊雅

★藤原俊雅さんは、こういうタイプのツインは作らない印象があります。

■紹介作品の手順(背景と同色にしています)

・縫田光司作
 a)「46銀、同桂、47桂」まで3手。
 b)「46銀、同桂、47桂」まで3手。

金子清志作
 a)「19歩、同銀成、28金」まで3手。
 b)「29金、同銀生、19歩」まで3手。
 c)「36歩、27桂、29金」まで3手。
 d)「29歩、同銀生、19金」まで3手。
 e)「27歩、29銀生、19金」まで3手。

springs
 a)「68馬、47玉、38金」まで3手。
 b)「73馬、35玉、25金」まで3手。