芦辺拓『大鞠家殺人事件』(東京創元社)★★★★★

昭和18年、大阪・船場の化粧品商《大鞠百薬館》の長男に嫁いだ陸軍軍人の娘・中久世美禰子は夫・多一郎が上海へ出征したことにより、大鞠家の人々と同居することになった。やがて彼女は惨劇に巻き込まれ――。
傑作。
戦時下でしか成立しない物語であるのが素晴らしく、探偵小説の使い方には脱帽。
「好事家のためのノート」にあるように〝《物語》の興味で惹きつける〟物語であり、大作家(読めば分かります)の作品の核となるものを取り込みつつしっかりと芦辺流になっているのは流石です。
(長々と書きたいのだけど、事件の真相に絡んだあれこれに触れざるを得ないので、こんな風にしか書けなかった)