若桜木虔『寝台特急出雲・大井川の殺人交差』(ジョイ・ノベルス)★★

午前四時、上り寝台特急《出雲八号》が金谷トンネルを出てすぐに投身自殺に遭遇し、急停車した。個室寝台で熟睡していた雑誌記者の西東南はベッドから床に転落して目覚め、隣の個室寝台の異変に気付いた彼女は車掌に話してドアを開けてもらうと、ベッドの上で男性が鎌で首の頸動脈を切られて殺されていた。「二重殺人ではないか?」という彼女の直感は的中し、金谷トンネル上の国道に放置されていた車の中から殺人の証拠が発見される。容疑者として大学生の兄妹が浮上するが、二人のアリバイは完璧で――。
事件記者・西東南シリーズ第5作で、村嶋なつみ(電子書籍では「奈津美」)刑事が初登場。
事件のシチュエーションは良いし、メイントリックは有名なパターンのものだが大胆な使い方でそこそこ良く(見破るヒントは作中の地図に書かれてあり、フェアプレイに拘っている点は評価できる)、そんなに酷い出来ではない。
ダメなのは、鷹見沢兄妹に注目する過程がご都合主義的すぎる所(あれはプロファイリングとは言えない)。詰め手も決定的な物とは言えず、モヤモヤする。章題・登場人物のネーミング・比喩表現のセンスのなさ、余計な記述や台詞の軽さもダメな所と言えるが、これらは我慢できるのでよし。
本作で許しがたいのは、クリスティ『オリエント急行の殺人』『ABC殺人事件』と草野唯雄『山口線〝貴婦人号〟』のネタバレをしていることで、他に書きようがあるのに工夫もせずにネタバレをしたのは責められるべきだろう。

賞品&購入本

特別懸賞出題3の賞品として、新刊をいただきました。ありがとうございます。
40.山本昭一/平井康雄編著『怒濤 山本昭一詰将棋作品集』(つみき書店)
 →改訂新版。86局収録。
41.『将棋世界』2021年7月号(マイナビ出版

倉阪鬼一郎『鉄道探偵団 まぼろしの踊り子号』(講談社ノベルス)★★☆

東京・新橋の喫茶店「テツ」に集う鉄道ファンたち。鉄道探偵団を名乗る彼ら・彼女らが、急いで下りてきたばかりの新幹線ホームへ別の階段を使い駆け上がっていく鉄道写真家(「東京駅で消えた男」)、湘南ライナー1号を踊り子号に誤認させる男の目的(まぼろしの踊り子号」)、山伏峠で出会った必死の形相でミニベロを漕ぐ男(盲腸線の果てに」)、嘘をついて2両編成の列車の二号車を切り離した鉄道マンの兄弟(「消えた二号車」)、Mr.Rが三つの駅に残した忘れ物(「終着駅の忘れ物」)、五つの謎を解き明かす連作集。
クラニーによる鉄道ミステリー(本書が刊行されるまでテツだと知らなかった)。細かい鉄道ネタは勿論のこと、マラソン(ランニング)・俳句・昭和歌謡ネタも出てくるのはご愛嬌。また、出てくる料理が美味しそう(特にケーキ)で、「『テツ』が実在したらなぁ……」と何度思ったことか(笑)。
さて、この連作は殺人事件が絡む第1話以外は人情噺(第5話はゲーム要素が強いけれど)なのでバカミスを期待するとガッカリするが、人情味溢れたライトミステリーとして十二分に楽しめる。
「何もこんなトリックを使わなくても……」という力技のトリックが炸裂する「東京駅で消えた男」がベストだが、Mr.Rの心情がぽろっと出る「終着駅の忘れ物」も良い。
ライトな鉄ミスもいいが、やはりクラニーにはバカミス系の鉄ミスを書いてほしいですねぇ……。

届いた本&賞品

37.『詰将棋パラダイス』2021年6月号
 →詰将棋順位戦。七條賞・門脇賞発表。
「詰将棋おもちゃ箱」4月の「展示室」の賞品として下記の詰棋書をいただきました。ありがとうございます。
38.田宮克哉=著/利波偉=編『ヤングデ詰将棋』(私家版)