大谷羊太郎『東京青森夜行高速バス(「ラ・フォーレ号」)殺人事件』(カッパ・ノベルス)★★☆

札幌での結婚式に出席後、友人二人と世田谷の自宅に戻った淵川志郎は妻・真佐子の刺殺体を発見する。一方、淵川らに同行して夜行バスと列車を乗り継ぎ札幌へ行った紺野綾子は、婚約者・副島優樹の行動に不安に駆られていた。事件の捜査にあたる警視庁捜査一課の河津班は容疑者を淵川と副島の二人に絞り、八木沢警部補はある人物に疑惑の目を向ける――。
大谷が本格的に乗り物を使ったアリバイ崩しに挑んだ長編。
夜行高速バスを使った新機軸のトリックを期待すると肩透かしを食うが、心理の盲点を突いた電話トリックはそこそこ成功していると思う。殺害方法は「そんなもん分かるか!」といういつもの大谷流機械トリックが炸裂。いつものことながら、よく考えますなぁ……(笑)。
あるアクシデントにより事件が複雑になるのは上手いと思うし、夜行高速バスを使った理由も一応納得できるが、手紙と大通公園の謎に無理矢理感が拭えないのは残念なところ。
気合いが空回りした作品と言えるだろうか。

購入本&届いた冊子

91.鮎川哲也・西村京太郎・夏樹静子・山村美紗佳多山大地=編『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編〉』(双葉文庫
 →鉄道ミステリ・アンソロジー。巻末に「編者解説」。
92.中町信『悲痛の殺意』(徳間文庫)
 →『奥只見温泉郷殺人事件』改題。
d93.勝浦修=監修『創作必至特集号III』(将棋を孫に伝える会)

悲痛の殺意 (徳間文庫)

悲痛の殺意 (徳間文庫)

詰将棋メーカー

今月から詰将棋メーカーへの投稿を始めました。
試作・没作の一部(変化系やフェアリー駒は投稿できない仕様なので)や没作を弄ったものを投稿しています。不出来なものばかりですが、暇潰しに覘いてみてください。
※フェアリーは、私のほかにspringsさんも発表しています。

山本巧次『早房希美の謎解き急行』(双葉文庫)★★★

池袋駅をターミナルとする大手私鉄武州急行電鉄に勤める早房希美が、「埼玉県警にその人あり」と言われる鬼刑事だった祖父・喜一郎の知恵を借りながら様々なトラブルを解決する連作集。
踏切の障害物検知装置の作動が頻発する裏にある企みが暴かれる「遮断機のくぐり抜けは大変危険です」、駅員に階段で突き落とされたと証言した被害者の秘密が明らかになる「雨の日は御足元に十分ご注意ください」、ストーカー事件が意外な展開を迎える「危険物の持ち込みはお断りしております」、痴漢男の不敵な笑みの真意に迫る「痴漢は犯罪です」、特急で誰かを捜している不審な乗客に手を差し伸べる「特急のご乗車には特急券が必要です」、以上5編を収録(全て書き下ろし)。
架空の鉄道を舞台にした、連作鉄道ミステリ。
巻頭に路線図と停車駅案内が掲載されていて、「鉄ミスはこうでなくちゃ!」とテンションが上がります(時刻表は載っていませんが、作中の諸々の記述から察すると作られていると考えていいでしょう)。
40~50ページくらいの中に「魅力的な謎」「人間ドラマ」「鉄道マンならではの情報と知識」が詰め込まれており、スピーディーな展開でぐいぐい読ませます。短いため一部のエピソードでは真相がバレバレですが、不満は感じません。
個人的ベストは意外な詰め手がバッチリ決まった「痴漢は犯罪です」だが、ストーカー騒動が思わぬ事態に発展する「危険物の持ち込みはお断りしております」、ベタなラブストーリー「特急のご乗車には特急券が必要です」の2編も捨てがたい。
各編安定したクオリティで、良質の連作集といっていいでしょう。シリーズ化希望。

早房希美の謎解き急行 (双葉文庫)

早房希美の謎解き急行 (双葉文庫)