倉阪鬼一郎『ぬりかべ同心判じ控』(幻冬舎時代小説文庫)

「ぬりかべ同心」こと北町奉行所定廻り同心・甘沼大八郎が怪事件・難事件のからくりを解く、クラニーの正統派捕物帳第2作。
第一話「仏罰の鳥を追え」
 駒込の法界寺で秘仏が御開帳され、住職の榮心和尚が「行いを正しくせねば、仏罰が下る」と説法した直後、倒れてきた大仏に押しつぶされて死に、弟子の榮明は心の臓に差し込みを起こして死んだ。半年後、新しい住職が御開帳を行い、美濃屋のあるじ・梅吉が仏罰の鳥を見て心の臓に差し込みを起こして死ぬ――。
 仏罰の鳥のトリックは失笑ものだが、トリックに使った“ある物”を入念に準備し研究した所に馬鹿馬鹿しさと狂気がある。その“ある物”が明らかになる68・69ページの禍々しさ(絶対にページをパラパラしないように注意!)と、それを活かしたラストのやり取りに倉阪作品らしさが出ていて良い。
第二話「すれ違う絵馬」
 京やのおかみ・おすみが毒を盛られて死んだ。入り婿の巳之吉が怪しいが、彼には大山に詣でていたという「居らずの証」があった。彼が手先に使えそうな人物の中に近江屋のおちさの名を見付けた甘沼同心の手下でかわら版屋の玉造は、谷中の心証寺(絵馬寺)の絵馬でその名を見たことを思い出す――。
 「交換殺人+暗号」テーマの一本。暗号は盲点を突いたシンプルな作りで、面白い。解決後の展開は好みが分かれるところだが、私は好きだ。
第三話「消えた福助
 押し込んだ家に判じ物を残す盗賊・判じ物の富こと富吉が福助堂に押し込んだ。あたりいちめん血の海で、福助堂夫婦の死体はなかった。いままで殺しに手を染めなかった富吉が宗旨替えをしたこと、残された判じ物のつくり方が違うことから甘沼同心は疑問を持つ――。
 真相は誰もが予想できる平凡なものだが、本作の凄い所は、この真相を大胆に明かしていることだ。何かあるとは思ったのだが、全く見抜けなかった。口惜しい。
第四話「空飛ぶ寿老人」
 いじめまがいのことを繰り返していた院郷部屋の親方とおかみが、ありえないような成り行きで頓死した。それは「大川に屋根船を出してしっぽりやっていたら、寿老人が飛んできて親方のの頭をたたき割り、日ごろから寿老人を怖がっていたおかみは心の臓に差し込みを起こして死んだ」というもの。部屋に所属する力士・床山・行司が大川端で稽古していたが、彼らと屋根船の間に船が一艘あり、泳いで渡って親方を殺すのは不可能だった――。
 「仏罰の鳥を追え」同様、バカトリックが炸裂。このトリックを成立させるための工作が笑える。
第五話「最後の大奇術」
 浅草奥山に大奇術師・道灌山大奇斎の最後の舞台を妻子と見に来た甘沼同心。刷り物の口上の判じ物を見抜いたぬりかべ同心は迷う――。
 判じ物は分かりやすいし、何が行われたかもバレバレだが、アレの処理と周到な工作が上手い。何よりも、大奇術師の決意のやりきれなさといったら……。

カトリックと折句が楽しめる連作で、「仏罰の鳥を追え」「最後の大奇術」の2編が双璧だが、残り3編もよく出来ている。続編が出たら読みたいなぁ。

風見潤 ミステリー作品リスト(PART2)

風見潤 ミステリー作品リスト(PART2)

2.幽霊事件・京都探偵局シリーズ(すべて講談社X文庫ティーンズハート
46.赤い鳥居荘幽霊事件(2001年9月)
47.天神さま幽霊事件(2001年12月)
48.吸血の塔幽霊事件(2002年3月)
49.五十の殺意幽霊事件(2002年5月)
50.東京ミッドナイト幽霊事件(2002年7月)
51.軽井沢高原鉄道幽霊事件(2002年11月)
52.名古屋わらべうた幽霊事件(2002年12月)
53.オニ伝説幽霊事件(2003年3月)
54.若狭人魚伝説幽霊事件(2003年5月)
55.博多夜祭幽霊事件(2003年7月)
56.横浜三重密室幽霊事件(2003年9月)
57.南紀火の蛇幽霊事件(2003年11月)
58.広島地図にない村幽霊事件(2003年12月)
59.殺人特急<日の出>幽霊事件(2004年4月)
60.みちのく夏祭り幽霊事件(2004年7月)
61.四国一周殺人おにごっこ幽霊事件(2004年9月)
62.月食屋敷幽霊事件(2004年12月)
63.魔界京都幽霊事件(2005年4月)
64.義経伝説幽霊事件(2005年7月)
65.夜叉ヶ池幽霊事件(2006年3月)

3.TOKYO捕物帳(すべて講談社X文庫ティーンズハート
01.TOKYO捕物帳(2000年4月)
02.炎を追いかけろ(2000年10月)
03.黒幕をやっつけろ(2001年3月)
04.密室をうち破れ(2001年11月)

4.女子高生真琴の推理レポート(すべて小学館キャンバス文庫)
01.京舞妓の秘密(1993年11月)
02.軽井沢の秘密(1994年11月)

5.その他
01.出雲神話殺人事件(1985年7月 エイコー・ノベルズ / 1988年7月 広済堂文庫)
02.殺意のわらべ唄(1987年4月 廣済堂出版 / 1989年6月 天山文庫)
03.東京トワイライトクロス(1987年7月 アルゴブックス)
04.津軽神話殺人事件(1987年11月 エイコー・ノベルズ)
05.闇の夢殿殺人事件(1989年2月 天山ノベルス)
06.火の国殺人事件(1989年10月 広済堂ブルーブックス)
07.死んでも死ねない殺人事件 熱血バイト娘絵理子と13の謎(1992年4月 新潮文庫
08.恋愛ゲーム殺人通信(1992年8月 光文社文庫

風見潤 ミステリー作品リスト(PART1)

風見潤 ミステリー作品リスト(PART1)

1.幽霊事件シリーズ(すべて講談社X文庫ティーンズハート
01.清里幽霊事件(1988年7月)
02.スキー場幽霊事件(1988年12月)
03.ミナト神戸幽霊事件(1989年7月)
04.冬の京都幽霊事件(1989年11月)
05.長崎異人館幽霊事件(1990年3月)
06.原宿幽霊事件(1990年7月)
07.北海道幽霊事件(1990年11月)
08.東京ベイエリア幽霊事件(1991年3月)
09.函館幽霊事件(1991年6月)
10.秋の飛鳥路幽霊事件(1991年9月)
11.瀬戸大橋幽霊事件(1991年12月)
12.能登半島幽霊事件(1992年2月)
13.大阪ウォーターフロント幽霊事件(1992年4月)
14.軽井沢幽霊事件(1992年7月)
15.秋の十和田湖幽霊事件(1992年11月)
16.クリスマス幽霊事件(1992年12月)
17.さくらの鎌倉幽霊事件(1993年3月)
18.沖縄幽霊事件(1993年6月 - 7月、上下巻)
19.秋の安曇野幽霊事件(1993年10月)
20.雪のバレンタインデー幽霊事件(1994年2月)
21.金沢幽霊事件(1994年4月)
22.香港幽霊事件〈九龍編〉(1994年7月)
23.香港幽霊事件〈ヴィクトリア・ピーク編〉(1994年7月)
24.京人形幽霊事件(1994年10月)
25.札幌ゆきまつり幽霊事件(1994年12月)
26.横浜赤い靴幽霊事件(1995年4月)
27.九州一周幽霊事件(1995年9月)
28.雪おんな幽霊事件(1996年2月)
29.バリ島幽霊事件(1996年7月)
30.軽井沢かぐや姫幽霊事件(1997年1月)
31.東京・京都二重誘拐幽霊事件(1997年4月)
32.まぼろしの富士幽霊事件(1997年7月)
33.鬼の里幽霊事件(1997年12月)
34.恐山幽霊事件(1998年3月)
35.怪盗シルバーアイ幽霊事件(1998年6月)
36.びわ湖幽霊事件(1998年9月)
37.レインボーブリッジ幽霊事件(1998年12月)
38.ヤマタイ国幽霊事件(1999年2月)
39.ひだ高山幽霊事件(1999年4月)
40.闇をつかさどるもの 幽霊事件スペシャル(1999年7月)
41.うらしま幽霊事件(1999年12月)
42.天草四郎幽霊事件(2000年6月)
43.四谷怪談幽霊事件(2000年8月)
44.京舞妓幽霊事件(2000年12月)
45.卒業旅行幽霊事件(2001年7月)

井上ほのか ミステリー作品リスト

井上ほのか ミステリー作品リスト(すべて講談社X文庫ティーンズハート

01.アイドルは名探偵(1988年4月)
02.アイドルは名探偵2 それはKISSから始まった(1988年10月)
03.名探偵を起こさないで(1989年4月)
04.アイドルは名探偵3 愛してるっていわせたい(1989年10月)
05.スコットランド古城殺人事件(1990年2月)
06.アイドルは名探偵4 いつまでもそばにいて(1990年6月)
07.ニューヨーク摩天楼殺人事件(1990年9月)
08.怪盗デニスの眠れない夜――セディ・エロル・スリラー短編集(1991年7月)
09.アイドルは名探偵5 そんなあなたに首ったけ(1991年10月)
10.アイドルは名探偵6 ロマンチックな恋したい(1994年4月)
11.ロンドン園遊会殺人事件・上(1996年4月)
12.ロンドン園遊会殺人事件・下(1996年6月)