松嶋智左『三星京香、警察辞めました』(ハルキ文庫)★★★

S県警本部刑事部捜査一課の三星京香はある事情から刑事部長を殴って負傷させ、警察人生に終止符を打った。離婚し、娘の親権を取るために頼ったのは、幼馴染でかつて恋心を抱いていた弁護士の藤原岳人。彼が勤務する「うと法律事務所」に調査員として再就職した京香の最初の仕事は、失踪した情状証人・羽根木有子の捜索。パラリーガルの芦沢夢良とコンビを組み、新潟県燕市に潜伏していた有子の身柄を押さえたが……。

西村京太郎『SLやまぐち号殺人事件』(文藝春秋)(評価保留)

SLやまぐち号の5号車が山口―仁保間7.5キロを走行中に消失し、乗客32名が誘拐された。乗客の中に東京の警備会社社長がいたことから山口県警は彼を狙った誘拐事件と推測。会社が株を売却して2億円を用意し送金したことが分かり、乗客の解放が近いと思われたが、乗客の1人が遺体で発見され――。
遺作となった、十津川警部シリーズ最終作。『オール讀物』2021年8月号~2022年2月号(中絶・連載タイトル『SL「やまぐち」号殺人事件』)掲載の原稿に未掲載の原稿を追加して刊行された。
〝車両消失と乗客誘拐〟という大ネタなので一縷の望みをかけてみたくなるが「やっぱりなぁ……」という結果になるので期待しない方がいい。事件は中盤から思わぬ展開をみせ、最終的には西村京太郎が晩年よく言及していたテーマに発展するのだが、犯人に感情移入できないので白けてしまう。
正直な所どう評価していいか分からない作品で、全盛期の作品のような密度(サスペンスと言ってもいい)はなく事件の転がし方も昔の作品以上に無理があるのでお薦めできないが、「西村京太郎は最後まで社会派の人だった」と確認できた点は良かった。
トラベル・ミステリーの帝王に献杯