ミステリー
警察を定年退職し、非常勤の交番相談員として働く百目鬼巴(どうめき・ともえ)。性格の穏やかな初老の警察OGである彼女は「刑事部長ですら頭が上がらない」などの噂を持つ推理の能力に長けた逸材だった――。「裏庭のある交番」(『オール讀物』2021年12月…
日野市で強盗傷害事件が発生、日野中央署に捜査本部が設置されることになり警視庁捜査一課から萬班の刑事たちがやってきた。班の新人・犬川椋巡査部長は班長の命令で女子大生失踪案件の捜査をすることになり、ペアとして組まされたのは不祥事を起こし二階級…
職務中でありながら酔っ払い、車を盗まれたと思い込んだ白人警官のマット・ウォーカーは黒人清掃員をはずみで射殺してしまう。証拠隠滅のためもうひとり殺し、三人目も殺そうとするが失敗する。胸を撃たれながらも逃げ延び一命を取り留めたジミーは警察・検…
一九六八年二月、メンフィス。黒人の無免許探偵スモーキー・ドルトンの事務所に若い白人女性ローラ・ハサウエイが訪ねてきた。彼女の亡母がスモーキーに一万ドルを遺贈するという遺言書を残していたというのだ。思い当たる節がなく事情を知りたい彼は、ロー…
宇宙ホテルを舞台にしたクローズド・サークル物で、広義のトラベル・ミステリー。 本作は格安宇宙旅行が実現しつつある未来の物語でありながらSF要素を極限まで排して〝現代の物語〟として描いているのが特色で、これは登場人物たちの背景や犯人の動機に活…
エリスとメープルの始まりの物語「少女」、その2年後に起きた事件を描いた「訣別」――「合法復讐屋」という裏の顔を持つ弁護士・衿須鉄児の暗躍?活躍?を描く連作第3弾。 予想はできたけど、「訣別」の結末が切ない……。復讐は感傷的に (宝島社文庫 『このミ…
S県H郡辰泊町で小学六年生の少年が校内で同級生に向かって拳銃を発射する事件が起きた。所轄の刑事課長から県警本部刑事部捜査一課の管理官に異動したばかりの風石マリエ警視は、このセンセーショナルな事件の捜査本部を指揮することになった。少年の聴取…
三十数年ぶりに再読。 第33回日本推理作家協会賞長編部門候補作。〈十津川警部〉シリーズ第11長編で、トラベル・ミステリー第2弾。 西村京太郎の良い所と悪い所がはっきり出ている作品。発表当時の社会問題が絡む動機の意外性は評価できるし、魅力的な謎と大…
三十代後半で県警本部捜査一課の班長に抜擢された宝尾玲警部。白星を重ねる優秀なチームの班長である彼女の原動力は、フィギュアスケーターの宇津宮蒼。推し活の時間を確保するため癖のある部下たちを巧みに操縦し、コンビニ強盗傷害事件(「フレンドールの…
生まれながらに妖怪や幽霊が見えるお美世が本所改与力の兄とともに窮奇(かまいたち)、置いてけ堀、送り提灯、ザシキワラシ、人魂――「妖怪の仕業」と騒がれる怪事件を妖怪たちの助けを借りながら合理的に解き明かしていく連作集。 ライトな感じかと思いきや…
千葉県七川市立図書館で大規模火災が起き、火元の地下書庫から身元不明の男性の遺体が発見された。焼死と思われたが頭部に殴られた痕があったことから殺人と判明、火災発生時、地下書庫が密室状態だったことも分かる。県警捜査一課の瀬沼刑事は捜査を進める…
三星京香はS県警捜査一課の刑事だったがある事情から刑事部長を殴り辞職、現在は「うと法律事務所」の調査員として働くシングルマザー。現在、彼女はパラリーガルの芦沢夢良とコンビを組み、離婚調停案件で依頼人の妻の浮気調査をしていた。その最中、事務所…
文春文庫オリジナルの警察小説アンソロジー第2弾。 松嶋智左の短編目当てで購入したが、収録作すべて高水準で読み応えがあった。 第142回直木賞受賞の連作集『廃墟に乞う』の仙道孝司の新たな事件を描いた佐々木譲「弁解すれば」(初出=『オール讀物』2023年…
第4長編で、草川が得意とする芸能界物。 裕介・陽子コンビと警察の捜査が交互で描かれ、事件の真相は『個室寝台殺人事件』『無縁坂殺人事件』と同様に犯人視点で明かされる構成となっている。 犯人の見当がつけやすく、第1の殺人のトリック(このトリックに…
離婚に応じず脅迫者と化した夫が邪魔な女優(「道頓堀で別れて」)、盗作疑惑で婚約者の母親から損害賠償を迫られているデザイナー(「古い墓」)、殺人を事故に偽装した四人の大学生(「呉越同舟」)、ベテラン警察官(「be happy」)――彼らの計画は完璧な…
ペットの猫に遺産を相続させる方法、デジタル遺品の相続の顛末、失踪した相続人の捜索、拒否する相続人に遺産を残す方法――顧客満足度100%を誇る相続専門弁護士・竜胆杠葉が脱法的手法を駆使して依頼人の意思に沿う相続を実現する連作集。4編収録。 無理難題…
信州松本の雪原で発見された女性の死体は鈍器でくりかえし強烈な殴打をうけ、顔の上半分が原形をとどめていなかった。現場に足跡ひとつなく、死亡推定時刻は雪が降りやんだ数時間後。道祖神の木像が凶器と判明するが、鍵のかかった祠から飛び出し飛び帰った…
《鉄ミス&トラミス大賞2024》受賞作〈新刊・新作部門〉 野上大樹『ソコレの最終便』(ホーム社) 候補作 霞流一「スティームドラゴンの奇走」(『ミステリマガジン』2024年7月号) 加藤元浩「臨時特別寝台列車事件」(『Q.E.D.iff ―証明終了―』第27巻収録)…
連続通り魔事件に揺れる桜台。一番星学院(通称バンボシ)桜台校に通う中学三年生の森本梨央は担任のアルバイト講師・不破勇吾が怖かった。彼は前職不明の社会人で、恐ろしい雰囲気を持つ男。最近、梨央は同級生の小笠原萌絵が一番遅いコマに授業時間を変更…
第7回書評家細谷正充賞受賞作。初出は『小説すばる』2022年6月号~2023年1月号(霧島兵庫名義)。 時代設定が秀逸で、人物造形・戦闘描写も見事。徐々に主要キャラクターたちの背景が明かされていくのは定番だが、なかでも川野辺少尉の背景には驚いた(序盤…
八丈島の植物公園の蘇鉄の木と横浜市港南区の港南女学院高校の桜の木に頭蓋骨がぶら下がっていた。二つとも二十代前半の男性のもので、古い靴紐で吊るされていた。品川署に特別合同捜査本部が設置されるが、被害者の身元は不明なまま時だけが過ぎていく。遊…
初出=『小説宝石』1990年3・4月号かつての人気女優で大ベストセラー作家の西島玲子にインタビューするため、新人フリー・ライターの遠藤美佳は彼女の別荘がある軽井沢にやって来た。別荘の訪問ベルを押すが反応はなく、開いていた裏手のキッチン口から中…
初出=『小説宝石』1989年1・3月号齢七十近いのに艶聞にはことかかない上添登志雄画伯が殺された。その発見者となったのが小池真知子と伏見エリ子だった。――事の起こりは、エリ子が大学の同窓生で画商の真知子から上添画伯に接触して彼から絵をもらってい…
大学四年生の私、新里可奈子はカダ・ディテクティブ・エージェンシーの探偵助手に応募して採用された。事務所の特別だいじな依頼人で奥信濃の秘境・秋山郷でプチホテルを経営する松城冴子さんから「鬼女を見た」と聞いた一週間後、彼女から事務所に電話がか…
狭山三姉妹の活躍を描く通俗本格〈探偵姉妹トリオ〉シリーズ第2集。梶の最後の短編集で、初出は全て《小説CLUB》(挿絵は宇野亜喜良)。 巻頭作は、艶美の親友が巻き込まれた不思議な事件に挑む「アダルトな殺人」(88年10月号)。コナン・ドイルとチェ…
優雅さと知性の長女・静江、行動力の次女・輝代、お色気とカンの三女・艶美――狭山三姉妹の活躍を描く〈探偵姉妹トリオ〉シリーズ第1集。初出は全て《小説CLUB》(挿絵は宇野亜喜良)で、前半2作までは〈探偵三姉妹〉シリーズと称されていた。 犯行現場…
初出=『別冊小説宝石』1982年爽秋号/採録=日本推理作家協会編『悪夢のダイアリー(『白骨ハンティング』改題)』私(草間俊矢)は十九も歳下の志穂子と結婚する。大学時代の先輩の山際雄一の好意で離山の別荘をただで借りて暮らしている私の前に彼女が飛…
初出=『小説現代』1988年臨時増刊号/採録=『冷血ホスピタル(『熱砂が殺す』改題)』私(金尾)は雷が嫌いだ。雷が鳴りナーバスになっていたところ、中学高校を通じての友だちでひそかに愛している須藤君から夕食に誘われる。野室君の歓送会をする予定だ…
浅間山の裾の追分原に集った四人の男(寄近・伊能・草間・須藤)と女(秋村)。五人には同じ殺し屋を雇ったという共通点があり、その殺し屋からの手紙で呼び出されたのだ。突然銃撃を受け、岩陰に身を潜めた五人。細心に注意深く、正体の片鱗も握らせないよ…
昭和二十年六月三十日、陸軍が開発中の新型兵器と研究員四名を乗せて焼津港から出港した太平丸が消息を絶った。三十一年後、和歌山県日置川町志賀で秋元肇が射殺された。彼のオサムシ採集を手伝うため遅れて到着した宇月与志雄は事件を知り調査に乗り出した…