藤沢周平『秘太刀馬の骨』(文春文庫)★★★★

ある北国の藩で、筆頭家老・望月四郎右衛門隆安が暗殺されるという大事件が起きた。それから六年後。近習頭取・浅沼半十郎は筆頭家老・小出帯刀の屋敷へ呼ばれ、望月暗殺に使われた秘太刀「馬の骨」の遣い手を探索する甥の石橋銀次郎の手伝いを下命される。「馬の骨」は御馬乗り役で剣術を教えている矢野家に伝わる秘太刀。現在の当主・藤蔵が第一候補。藤蔵は他流試合の禁を理由に試合を拒むが、銀次郎に粘られ試合を行う。だが、藤蔵は後継者ではなかった。矢野道場の高弟五人――沖山茂兵衛、内藤半左衛門、長坂権平、飯塚孫之丞、北爪平九郎――に目を付けるが、他流試合の禁を理由に試合を拒まれてしまう。そこで銀次郎は彼らの弱みを握り、試合をしなければならない状況に追い込む。秘太刀「馬の骨」の遣い手は誰なのか。探索を進めるうちに銀次郎と半十郎は、藩の執政を巡る暗闘に巻き込まれてゆく。
藤沢作品の隠れた秀作。『NHK金曜時代劇』でドラマ化されています。藩の名前は明示されていませんが、ファンにはおなじみの海坂藩が舞台となっています。「隠し剣」シリーズの作者ですので、剣戟シーンは絶品。また、「馬の骨」継承者の正体に関しても、海外ミステリのファンとして知られていた作者らしく意外な人物であっと言わせてくれますが、納得しがたい部分がいくつかあるのが残念です。解説で出久根達郎が独自の推理を披露していて、何が何やら訳が分からなくなってきた。色々と考えてみても、あの人物でしかあり得ないと思うので、作中の推理で納得するしかないのだが……。(2005/9/25記[改稿])

秘太刀馬の骨 (文春文庫)

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