『ミステリーズ! vol.45』を拾い読み

ミステリーズ! vol.45』(2011年2月)を拾い読み。
倉知淳「私がデビューしたころ 新人賞を獲らずにデビューしてもまあどうにかなるものだというお話」。戸川さん、すげぇ。
大山誠一郎「Cの遺言」
 クルーズ船〈ラヴィニア〉のサンルームで、コスメティクス・チトセ社長・千歳百合子の撲殺体が発見された。遺体の右手にライターが握られ、テーブルクロスにはアルファベットのCが書かれていた。マンションオーナー・峰原卓の推理はいかに――。『アルファベット・パズラーズ』の新作。「推理クイズ」の域を脱していない。端正なロジックではあるが力がない(心に響かない)ため、薄っぺらい推理でしかない。これではCの真相のバカバカしさが台無し。力のある人なのだから精進してほしい。
西澤保彦「対の住処」
 2010年、師走。ホームレスの浅黄学殺しの被疑者・畝米龍二郎のアリバイの裏を取るため、若狭は同僚の桝田美智子と一緒に、愛人の厚東あきえが住む分譲マンション〈コーポ天華寺〉に聞き込みに来ていた。ガラス戸から有名な建築士・円谷円が手がけた〈天華寺会館〉(通称〈フラワーポット〉)が見え、若狭は既視感を憶える。厚東の部屋の上下の部屋の住人への聞き込みを終え、若狭は既視感の原因に思い至る。それは2件の未解決事件―12年前に起きた学習塾経営者の母親殺し、3年前に起きた地元で有名な才女殺し―だった――。久しぶりの西澤作品。厳密には本格ミステリではないが、論理のアクロバット(というか妄想)を堪能。妄想から浮かび上がる、犯人の異常性が良いなぁ。桝田は20代の女性なのにオヤジキャラで惚れました(笑)。
芦辺拓『スチームオペラ 蒸気都市探偵譚』(第三回)
 ジーン・モーロイ教授が密室で殺された。両隣の宿泊客の証言から浮かび上がってきたのは「不可解」と「不可能」。エマとユージンが現場を調べていると、教授の友人だというウーゴ・サイモン博士が現れ推理を語り、名探偵バルサック・ムーリエが真犯人を指摘する――。おお、SFミステリらしい密室トリック! ユージンの行動の理由は次回に説明されるのかな。
「[特別企画]北村薫×有栖川有栖トークショー 花園大学『ミステリトーク2010』」。戸川さん、すげぇ(その2)。日本探偵小説全集第2期の話が面白い。
杉江松恋「路地裏の迷宮踏査45 アタイヤにつながる線」成瀬巳喜男監督の『女の中にいる他人』は観ているが、原作(エドワード・アタイヤ『細い線』)は未読。入手出来たら読んでみよう。

ミステリーズ! vol.45

ミステリーズ! vol.45

細い線 (ハヤカワ・ミステリ文庫 50-1)

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女の中にいる他人 [DVD]

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