『ミステリマガジン』2011年2月号を拾い読み

『ミステリマガジン』2011年2月号(No.660)を拾い読み。
レイ・ラッセル「これは本心からいうんだぞ」And I Mean That Sincerely!(初出=《プレイボーイ》1964年8月号)
 作家クレイトン・ホーンはハリウッドに新参の男に語る。プロデューサーのケン・グラミットと共に取り組んだ、発禁没収の憂き目にあったブレーズ・マリンの二大傑作の映画化企画の顛末を――。業界内幕もの。オチにニヤリとしたが、どうにも楽しめない。原文で読んだ方が面白いのかも知れない。
ジーン・シェパード「Cで失神」Lost at C(初出=《プレイボーイ》1973年5月号)
 小学校に入学し、アルファベット貧民であることに気付いたぼく。先生から指されないため、ぼくらはあらゆるテクニックで逃れていた。高校に入学したぼくは勉強をしようとするが、アルファベット貧民であることから逃れることは出来ず、また、代数につまずく。期末試験まであと二日の水曜日、ぼくは集中力をなくし先生に指されてしまう――。懐かしさが込み上げてくるノスタルジックな作品。語りで聴いてみたかった。“アルファベット貧民”というフレーズ、良いなぁ〜。
チャールズ・ボーモント「ホラー映画の恐怖」The Horror of It All(初出=《プレイボーイ》1958年3月号)
 エッセイ。正鵠を射る分析に感心、ホラー映画に関するエピソードが面白い。
ジョン・コリア「お望みどおりに」Asking for It(初出=《プレイボーイ》1975年1月号)
 マルセイユ。アレック・ウィーヴァーは自宅アパートで、友人のジェイ・ウィズデンと飲んでいた。殺されたい男を主人公にした小説を書きたい、ミミという奴隷の夢、ニューヨークの精神科医がでっちあげた話。ジェイが帰宅した後、アレックの運命は思わぬ方向へと転がってゆく――。なるほど、これは悪女小説なんですな。枚数が少ないのでオチを予想しやすいのが難ですが、巧いなぁ。
石上三登志「トーキョー・ミステリ・スクール」第14回。「新日本人」三船敏郎との出会い、岡本喜八監督作品との出会い。
皆川博子『DILATED TO MEET YOU ―開かせていただき光栄です―』(第6回)
 エドから標本が人手に渡る危機に瀕していると聞いたダニエル・バートン。兄ロバートが株で大損し、標本コレクションを抵当にあてているというのだ。詳しいことを聞くためテンプル銀行へ向かう途中、サー・ジョン直属の警吏に呼び止められ、サー・ジョン邸へ向かったダニエルは判事から顔を潰された死体はパブリック・ジャーナルの社長トマス・ハリントンであるとを聞く。―数日前、エヴァンズに幽閉されていたネイサンは脱出に成功し、夜のロンドンを走る――。2つのパートの繋がりがより密接になり、ますます面白くなってきた。大分データが揃ってきたので、次回を読む前に推理を組み立ててみよう。
安井俊夫「建築視線」第8回。今回取り上げるのはジョン・ダニング『死の蔵書』。一万冊の本を持つにはどれ程の広さが必要なのかを考える。六畳一間に(計算上)あんなに並べることができるとは。
紀田順一郎「幻島はるかなり〈翻訳ミステリ回想録〉」第14回。1961年の出来事。ポケミスは定番ではなかったとか、精神病院への取材話(「SR」の謎!)が面白い。

ミステリマガジン 2011年 02月号 [雑誌]

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死の蔵書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

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