二階堂黎人、千澤のり子『レクイエム 私立探偵・桐山真紀子』(講談社ノベルス)★★★☆

2006年3月、横浜市に新しくできた〈加美の森公園〉の駐車場で、卒園遠足で公園を訪れていた〈ベラージュ幼稚園〉のバスが爆破され、26名が死亡した。1ヵ月後、タレコミ電話がきっかけでフリーターの相沢光則が逮捕される。自白と証拠が揃っていたため裁判はスピード結審かと思われたが、公判が始まると相沢は「爆弾は作ったが盗まれた。爆弾を盗んだ者が真犯人だ」と主張し、犯行を否認。裁判は長引くこととなった。2007年8月、探偵の桐山真紀子は、勤めている警備会社の社長・吉田作蔵からこの事件の再調査を依頼され、調査を開始する。事件の担当刑事、相沢の弁護士、相沢、遺族、目撃者たちから話を聞くが、たいした成果は得られず調査は難航。その最中、目撃者のひとりである黒田祐二が殺される。事件は赤いランドセルを背負った女の子の幽霊の祟りだとの都市伝説が囁かれ……。殺人事件の真相は? バス爆破事件に真犯人はいるのか?
※ネタばらしにあたる箇所は背景と同色にしております。
私立探偵桐山真紀子シリーズ第2作。前作『ルームシェア』同様、本格ミステリの趣向を入れたハードボイルドで、前作よりもハードボイルドの方に比重が置かれています。本作では真紀子が再調査をするバス爆破事件とメールで語られる連続殺人事件、2つの事件が語られるわけですが、2つの事件の繋がりに不満を持つ人がいるかもしれません(本作のテーマである「愛する者を失った哀しみ」が根底にあるので、個人的にはこういう繋がりでも全然OKなのですが)。爆弾魔の隠し方は秀逸で、見事に騙されました。そして、狂人の論理が炸裂している動機には唖然。これを当てられる人はいるんでしょうか(笑)。連続殺人事件の方は、爆弾魔以上に当てるのは難しく(さりげなくヒントが提示されていますが、気付く人はいないでしょう)、犯人を描かない(登場させない)という構成が見事です。ミステリー以外の部分では、被害者遺族の言動に凍りつきましたね(現実に、こういう遺族がいるのかも知れないなぁ……)。いやぁ、怖い。
真紀子と馬田警部補の行く末が気になるので、次回作は早く出してくれることを期待します。お願いしますよ、千澤センセイ(笑)。

レクイエム 私立探偵・桐山真紀子 (講談社ノベルス)

レクイエム 私立探偵・桐山真紀子 (講談社ノベルス)