『ミステリマガジン』2010年3月号(No.649)を拾い読み。「なぜ犬ミステリ特集?」と思ったが、ディーン・クーンツ『一年でいちばん暗い夕暮れに』の刊行に合わせてのことらしい。
霞流一「冷たい天使」(書下ろし)
雪の夜、パートタイムで探偵をしている俺は、ボストンベリアのベイブから助けを求められる――。「探偵犬アロー」シリーズ第3作。いい話。
エドワード・D・ホック「百羽の鳥を飼う家」The House of a Hundred Birds(初出=《EQMM》1982年2月号)
ロンドン北部の大きな家に住むアンナとガートルードのスティグナー姉妹は、百羽の鳥を飼っていた。ある夜、ガートルードが自宅のキッチンで刺殺される。ロンドンで旅行会社を経営するチョーンシー・ライドアウトから事件の話を聞き興味を持ったサイモン・アークは、わたしを伴いロンドンへ飛んだ。アンナは下宿人でパン職人のダグラス・アーヴィングに疑いの目を向けていたが、サイモンは彼女の心を見抜いていた。ガートルードは幽霊に殺されたのではないかと、アンナは思っていたのだ――。「オカルト探偵サイモン・アーク」シリーズ第37作。ある程度までは見抜けたのだが、見事にやられた。さすが短篇職人、上手い。
高橋葉介「電気男(エレキ・マン)と液体男(ウオーター・マン)」
顔のない女の今度の標的は、電気男(エレキ・マン)と液体男(ウオーター・マン)の殺し屋兄弟――。連載漫画『顔のない女』の第三話。最後の1コマにしびれた。
芦辺拓『七人の探偵のための事件』(第1回)
かつての名鳴町、平成の大合併後は次萩市名鳴地区――は県境にある小さな町で、何の面白みもない町である。統廃合で警察署がなくなったこの町で『人死に』が起こった。所轄の次萩署は何の捜査もしない。業を煮やした青年団の面々は、大戸島佐市郎爺さんの助言もあり、人死に慣れした探偵たちを雇うことにする。ところかわって、東京・日比谷。複合商業施設である千本プラザの上層階にあるミチ・ホールで、名探偵レジナルド・ナイジェルソープの来日記念講演会が開かれていた。ナイジェルソープが日本語で講演していると、使われていないはずの二階のボックス席で異変が起こる――。新連載(隔月掲載)の第1回。ノンシリーズのユーモア本格だと予想していたが、全く違った。ナイジェルソープの登場に驚いたが、日本語が喋れたり日本の名探偵(金田一耕助・神津恭介・鬼貫警部・亜愛一郎)を知っていることにも驚いた。次回が楽しみ。
小説以外のもの。長島良三「ジョルジュ・シムノン――小説家と愛娘の異常な愛」は最終回。偶像崇拝的な愛どころではない。これはもう病気。紀田順一郎「幻島はるかなり(翻訳ミステリ回想録)」はラジオ番組『灰色の部屋』、級友の話、ポケミス創刊、神保町通いのはじまりなど。『都会の叫び』、観みてみたいなぁ。石上三登志「トーキョー・ミステリ・スクール」は神田古書店街、ペイパーバック、レジナルド・ローズの話。『弁護士プレストン』は観たいドラマの一つで、CSで放送されるのを期待しているのだけど無理だろうなぁ。リメイク版のTVMで我慢するしかないのか。千葉豹一郎「お茶の間TV劇場」、今回は不運の戦争ドラマ『ギャラント・メン』を紹介。原保美、田中明夫が吹替えをしているので観たいぞ。
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一年でいちばん暗い夕暮れに (ハヤカワ文庫 NV ク 6-9) (ハヤカワ文庫NV)
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