赤川次郎『雨の夜、夜行列車に』(徳間文庫)★★★☆

頼まれてもいない講演に出掛けようとする元大臣の富田恒宏と使用人の中田貞子。覚醒剤密売組織と警察から追われる宮部武士、彼と一緒に逃げようとする妻・亜紀子。彼女の家を張り込む小村刑事は、妻・初子が相棒の工藤と浮気していることを知る。会社をクビになったことを妻に言い出せず死出の旅に出た沼木はバスで元同僚の米田恵理と偶然出会い、2人はなりゆきで関係を持ち、駆け落ちを決意する。沼木の様子に不審を抱き会社を訪ねた娘の万里は父がクビになったていたことを知り、行方を追う。21時東京駅発の夜行列車に乗り込もうとしている者たちに待ち受ける運命は――。
1988年1月刊。
5時から21時まで十六時間の出来事を描いた、タイムリミット・サスペンス群像劇。
とても読みやすい文章で、十数人のキャラクター(端役を含む)がきっちりと描き分けられており、安定のストーリーテリングで引き込まれる。これに赤川の持ち味にひとつである〝容赦のなさ〟が加わるのだから、面白くないわけがない。
傑作・秀作の類ではないが、赤川の上手さが光る快作。お薦め。

雨の夜、夜行列車に (角川文庫)

雨の夜、夜行列車に (角川文庫)