津村秀介『紅葉坂殺人事件』(ケイブンシャ文庫)★★★

雨が降る名古屋で、大塚貿易社長・大塚国蔵が二千五百万円を強奪された。ルポライターの浦上伸介は、この事件を「夜の事件レポート」で採り上げるため調査を開始。大学の先輩で『毎朝日報』神奈川県警記者クラブのキャップ・谷田実憲から情報を貰い、警察がマークしている大塚貿易社員・長井紀雄を当たるが心証はシロ。谷田から大塚と彼の隠れた関係を聞き尾行を開始するが、やはり彼が事件に関与しているとは思えない。強奪事件から十一日後、雨の横浜・紅葉坂で大塚が刺殺される。凶器から掌紋が検出された長井が逮捕されるが、彼の無実を信じる浦上は福岡に飛び、失踪した大塚の別の隠し子の加部光子・卓郎の姉弟が関与していると確信する。大塚貿易社員の藤沢和子と小泉保彦がその姉弟と推理するが、2人の身元は確かなものであることが分かる。諦めきれない浦上は、加部姉弟の影を見ながら小泉のアリバイ崩しに挑む――。
浦上伸介シリーズ第2作(津村の第6長編)。
前作『山陰殺人事件』よりは面白い。基本的なトリックを組み合わせており、最終盤に盲点を突く事実が明かされる点は良いが、ある工作は見え見えなのに終盤まで浦上がそれに思い至らなくてイライラしてしまった。
謎のベールに包まれている浦上の過去が類推できる記述や淡路警部との初対面シーンがあるので、シリーズのファンはチェックするといいかもしれない。
(再読)

紅葉坂殺人事件 (講談社文庫)

紅葉坂殺人事件 (講談社文庫)