門前典之『死の命題』(新風舎)★★★★

「本格奇想パズル」(帯の惹句)

西洋建築史の権威・美島総一郎教授がスターウォッチング中、季節はずれの大雪に遭い行方不明となって3年8ヶ月。信州北部にある美島館の落成を祝い、教授縁の者達が集まり故人を偲ぶことになった。集まったのは教え子の篠原綱次郎・蓑田良治・真標京華、友人の雅野大輔・鷹舞宏、雅野の患者の阿武澤邦夫の6人。出迎えてくれるはずの美島夫人はおらず、6人は焔水湖を望む美島館で3泊4日を過ごすこととなった。異変は2日目に起こる。電話が不通となり、何者かが玄関のアプローチにあった断頭台に悪戯をしたのだ。また、車のタイヤが刃物で切り裂かれ、外界との連絡手段がなくなる。こうして『閉ざされた雪の山荘』が出来上がった。3日目の朝、館の外で京華の死体が発見される。これを皮切りに、一人また一人と死んでゆき、そして誰もいなくなった――。事件は篠原が5人を殺害し自殺したとして処理されようとしていた。篠原の妹・裕子の依頼で、建築&探偵事務所を経営する風変わりな探偵・蜘蛛手は捜査を開始する。
「雪の山荘もの」の怪作。冒頭に『読者への挑戦状』があり、相当の自信が伺えます。事件の構図は明かされてみると「なぁーんだ」というもので、勘のいい人ならばすぐに見破れると思います。プロローグで提示される「兜虫の亡霊」の真相は、一生忘れることの出来ない笑撃的なもので、よくもまぁこんなことを思いついたものだと感心してしまいました。粗の多い作品ですが、こういうのは嫌いではないです。
本書は第7回鮎川哲也賞最終候補作『唖吼の輪廻』を改題・改稿し、自費出版されたもの。改稿のうえ創元推理文庫から刊行と予告されてからウン年経ち、「また予告詐欺か」と思っていたら、原書房から『屍の命題』の題で2月刊行との予告が。これは買わねばなるまい。(2001/11/3記[改稿・追記])

死の命題

死の命題