太田蘭三『旗本けんか侍』(祥伝社文庫)★★☆

江戸では毎晩辻斬りが現れていた。南の奉行所へ届けられた密告状には、のっそりの又七郎が辻斬りの主だと書かれてあり、町方は探索に当たっていた。ある夜、霞の銀次は大名屋敷と間違って目付・神尾小刑部の屋敷に忍び込み、三男坊の又七郎に見つかるが、「家出をする」と言って銀次について来た。彼がのっそりの又七郎だと知った銀次は大川橋で別れようとしたが、辻斬りに遭遇。又七郎と辻斬りとの戦いは引き分けとなり、彼の腕と度胸に惚れこんだ銀次は、住居の喧嘩長屋で一緒に暮らすことにする。退屈を持て余した二人は「喧嘩屋」を始め、御家人くずれの悪太郎一家とその用心棒で辻斬りの岩間伝心、花川戸の顔役・黒熊の喜平次一家と対立する。そんな折、銀次の商売が町方にばれ、二人は旅に出ることにする。時を同じくして、又七郎の許婚・お鶴も旅をしていた。お鶴は彼女を追って茶店で待ち構えていた悪太郎一家と岩間伝心に捕らえられかけたところを又七郎に助けられるが、平塚の宿で又七郎が伝心と決闘をしている間にお鶴と銀次が悪太郎一家に捕まってしまう。
太田瓢一郎名義で昭和35年10月に刊行された『退屈ざむらい』(小説刊行社)を改題。
チャンバラあり、ユーモア&コメディあり、ちょっとしたエロもあり――と、娯楽時代小説の王道をゆく作品。全体的にほのぼのとしています(湯屋で又七郎と伝心が再会するというのが微笑ましい)。ラストがあっさりし過ぎているのが不満ですが、面白かった。スラスラ読めて、読後には何も残らない。最高の娯楽小説でしょう。(2005/5/20記)

旗本けんか侍 (祥伝社文庫)

旗本けんか侍 (祥伝社文庫)