辻真先『奥飛騨、殺人慕情』(ジョイ・ノベルス)★★☆

美貌の敏腕イベントプロデューサー・大塔寺燃(だいとうじ・もえ)、妹の倫と共に奥飛騨の山間の町・松乃井町を訪れた“夕刊サン”のデスク・可能克郎。町興しのイベントとして、皆川喬作演出・久慈マユリ主演による大劇魔団の怪談劇『我輩は化け猫である』をかつての名旅館『陽気亭』で興行することになったのだ。夜、倫と共に道具の確認に『陽気亭』へ赴いた克郎は、またしても殺人事件に遭遇する。胸を刺された男と、記憶喪失の美少年を密室状態の納戸で発見したのだ。納戸から続いていた泥靴の足跡は、別荘へ向かう吊り橋で途切れており、少年が犯人としか思えない。興行が迫る中、少年の無実を信じる燃たちは捜査を開始する。
※ネタばらししています。
塔寺姉妹&可能克郎シリーズの第1作。旅情ミステリーとなっているが、実際は小粒な本格ミステリ。トリック・犯人はすぐに見当がついてしまうが、退屈することなく楽しめる。最終章のスラップスティックな展開は辻センセイらしくて良いですね。 ただ、トリックに関して2点気になる瑕(「ビニール袋はいつ用意したのか」「いつから猫の体臭を絡ませたハンカチを持っていたのか」)があるのが残念。後者に関しては、猫の体臭を絡ませたハンカチをポケットに入れて犬に吠えさせるのだが、上手くいくのかねぇ。ちょっと納得いきません。「大塔寺姉妹の謎」と「一人の正体」が次作に持ち越されてしまったので早く続きが読みたい。(2005/3/25記)

奥飛騨、殺人慕情 (ジョイ・ノベルス)

奥飛騨、殺人慕情 (ジョイ・ノベルス)