深谷忠記『信州・奥多摩殺人ライン』(光文社文庫)★★★

清新社の編集者・笹谷美緒は怪我をした同僚の代わりに、深夜、推理作家・荒木康之の運転する車で穂高町にある彼の別荘へ向かった。到着早々、2人は寝室で荒木の妻・智子の絞殺死体を発見する。9日後、奥多摩の山林でタレント養成学校の研究生・田村カオリが絞殺され、全裸で遺棄されていた。荒木の親友でマキ食品副社長・牧祐介が2人と深い関係であったことが判明し、無関係と思われた2つの事件は大きく動き出す――。
壮&美緒シリーズ第1作にして、「殺人ライン」シリーズ第1弾。1986年9月刊。
四半世紀ぶりに再読しました。
時代色が少しあるものの、どぎつくないためスラスラ読めます。昔の小説は風俗描写が気になってなかなか作品世界に入り込めない場合がありますが、本作は心配いりません。
警視庁の勝部長(本作の前に発表された2長編で探偵役を務めた、本シリーズのレギュラーキャラクター)や長野県警の秋葉刑事による捜査パートが多くを占めるので、警察小説色が強いです。とはいっても本作は本格ミステリ、出番は少ないものの探偵役の黒江壮が要所要所で勝部長に助言をして事件の捜査を大きく進展させ、最後は壮の推理で事件が解決します。
犯人はバレバレですが、田村カオリの行動の謎がシンプル・イズ・ベストなアリバイトリックと繋がるプロットが上手いです。
壮が犯人にトリックを仕掛けて対決し、犯人の鬼畜さが浮かび上がる“ある事実”が明かされる(勝部長の見せ場でもある)最終章がとても良い!
地に足の着いた地味な作品ですが完成度が高く、シリーズの型(フォーマット)が完成しているので、ファンは要チェックでしょう(ファンでなくても読んでね)。
(再読)

信州・奥多摩殺人ライン (光文社文庫)

信州・奥多摩殺人ライン (光文社文庫)