吉村達也『編集長連続殺人』(光文社文庫)★★★

中央出版の週刊誌『週刊A(エース)』の二代目編集長・神田直之が車で崖に転落して事故死し、三代目編集長・渋谷悦史はサーカスを見学中にライオンに襲われ死亡した。いずれも就任13日目に起きた事故だった。怪文書がばら撒かれ社内が騒然とし、非公式に捜査を開始した警視庁捜査一課の田丸巌警部はサイコ・セラピストの氷室想介に協力を依頼する。捜査が進む中、サーカス団団長・風間五郎の刺殺体が自宅でピエロの扮装をした状態で発見され、四代目編集長に任命された吉岡誠は精神的に追い詰められ大阪で自殺を遂げる――。
〈サイコ・セラピスト氷室想介シリーズ〉第1長編。
四半世紀ぶりくらいの再読。
吉村作品の特徴のひとつである「異常心理への興味」が見られる(サイコ・セラピストが探偵役なのだから当然だが)本作、編集長連続殺人のトリックはたいしたことないが(そもそも、確実性がある計画ではないし)、風間団長殺しから犯人を限定していくロジックが良く出来ており、犯人が現場で行った工作が仇となる展開は定跡とはいえ上手い。
また、ある人物の思惑が事件に影響を与え、その目論見も無駄であったことが判明するのが面白い。
傑作・秀作の類ではないが、上々の仕上がりだろう。
(再読)