赤川次郎『死体置場で夕食を』(徳間文庫)★★★☆

新婚の紺野洋一・芳子夫妻は新婚旅行の三日目、吹雪の山道で道に迷いロッジに辿り着く。主人の福原夫妻は二人を快く迎え入れてくれ、先客の六人(湯川、田代美津子、安西夫妻、太田夫妻)とも親しくなった。深夜二時頃目覚めた芳子は福原夫妻と太田夫妻がスワッピングしていることを知り、起きてきた洋一に話すが、翌朝、彼はそんなことを聞いておらず、二時頃に起きたが芳子は寝ていたと言う。一階に降りた二人は静かなことを不審に思い客室を見て回るが誰もおらず、福原を捜しに行った地下のボイラー室で彼の死体を発見する。車が使えず、ボイラーの燃料が切れたため、四日後にスキーで山を下り町の派出所に助けを求めに行った芳子は、警官からロッジは池島という大地主が夏の間別荘に使っていると聞き驚く。連絡を受け本署からやってきた若い刑事・瀬川と一緒にヘリコプターでロッジへ向かうと火事で燃えており、焼け跡から男の焼死体が一体発見される。洋一の生死が不明なまま二か月が経ったある夜、芳子は警察を辞めた瀬川から連絡を受け、夕食後にベッドを共にする。手に取った夕刊に目を通すと、強盗殺人の被害者として福原夫人の写真が載っているのを見つけ、一連の事件の真相を解明するため二人は調査を開始した――。
1980年6月刊のロマンティック・ミステリー。1982年2月20日に『土曜ワイド劇場』で『恋人交換殺人事件 雪山に消えた七人』(出演:池上季実子柴俊夫小倉一郎名古屋章、片桐夕子、高沢順子ほか)のタイトルで映像化、1989年にはPCゲーム化されている。
ロッジでの出来事の真相は現実的なものでつまらない(途中で芳子が立てた仮説の方が面白い)が、この状況を作りだすための工作はリスクがあるものの大胆で面白い。
「死体の山が築かれる中、ある事実が判明して事件が複雑化していく」というプロットを上手く捌いており、赤川の巧者ぶりが遺憾なく発揮された快作です。
(再読)

死体置場で夕食を: 〈新装版〉 (徳間文庫)

死体置場で夕食を: 〈新装版〉 (徳間文庫)