深谷忠記『札幌・仙台48秒の逆転』(光文社文庫)★★★

九月七日、函館空港から飛び立った丘珠空港行きの東西航空四八五便が駒ヶ岳の南東の山麓に墜落し、乗員乗客六十四名が死亡した。同日、函館で男が轢き逃げされ死亡し、東京から来ていた女性が消息を絶った。翌年の四月二十九日、函館郊外の山林で女性の白骨死体が発見され、昨年消息を絶った尾関靖江と判断される。彼女は笹谷美緒の同僚の桑田キミ従妹だった。五月二十一日、上野駅に到着した寝台特急ゆうづる4号」の三号車B寝台で、男の刺殺体が発見された。ニュース速報を見た美緒はひっかかるものがあり警視庁捜査一課の勝部長刑事に連絡、その情報がきっかけで十日くらい前に退職した函館北署の元刑事・大畑一明と判明する。彼は靖江が勤めていた帝都大学の電話番号が書かれたメモを所持していた。捜査により帝都大学細胞工学研究所の教授・泉圭太郎が浮かび、大畑が彼を脅迫していたことを掴む。聴取しようとした矢先に泉が失踪、その後シロと確定するが彼は姿を現さない。泉は殺されていると考えた勝部長は同僚の男に目をつけるが、彼には鉄壁のアリバイがあった――。
壮&美緒シリーズ第3作にして、「逆転」シリーズ第3弾。1987年4月刊。
今回2人が挑むのは、犯人の不可解な行動とアリバイ。本作でもアリバイを支えるために機械トリックが使われているが、今回のトリックはいただけない。「山村美紗かよ!」という感じ(笑)。ただ、「なぜ犯人はリスクを冒してまで車で函館に行ったのか」という謎が発想の転換でスーッと解けるのが堪らない。
機械トリックは不発だが、謎解きはまずまず。水準作でしょう。
(再読)