ミステリー

深谷忠記『アリバイ特急+−の交叉』(講談社文庫)★★★☆

宮崎県日向市桜ヶ丘公園で東京都目黒区在住のホステス・相川理沙の絞殺体が発見された。上京した日向西署の北川刑事と県警捜査一課の小酒井刑事の捜査で東西化成工業開発企画課課長・柏木光彦が浮上、延岡に出張していた彼は事件の数時間前に日向市駅から上…

辻真先『ブルートレイン北へ還る』(徳間文庫)★★★★

トラベルライターの瓜生慎はブルートレイン「日本海」のルポと日本最東端駅探訪を書くため、大阪駅から東根室駅へ向かう取材旅行に出た。最初に乗車した「日本海1号」のトイレでまたもや死体に出くわした慎がジョーズ車掌長を連れて戻ると、死体が消えていた…

辻真先『死体が私を追いかける』(徳間文庫)★★★☆

三ツ江財閥の令嬢・真由子が金庫から重要書類(通称「三ツ江ファイル」)を持ちだし家出した。トラベルライターの卵・瓜生慎は太宰府天満宮でのちょっとした事件がきっかけで彼女と知り合い、元税務署員の経営コンサルタント・日下部源吾を入れた3人で旅をす…

笹沢左保『遥かなり わが叫び』(角川文庫)★★★★☆

「四年と十か月ぶりに娑婆に出て来たと伝えて下さい。ナオ子と行雄のことについては、改めて礼をさせてもらうってね。いまに面白いことになりますよ」警視庁捜査一課伊勢波班に、鬼塚弘一から電話がかかってきた。五年前、彼は妻のナオ子を犯した春日井純を…

津村秀介『瀬戸内を渡る死者』(BIG BOOKS)★★★☆

『週刊レディー』の記者・北川真弓は四国取材の途中、屋島で女性の絞殺死体を発見した。被害者は上野で夫・幹夫とスナックを経営している滝田陽子と判明。胃の内容物から死の直前に焼き肉店に立ち寄ったと思われ、犯人は発見現場近くの廃屋になっている彼女…

小杉健治『法廷の疑惑』(FUTABA NOVELS)★★★★☆

昭和57年、私生児の相羽李奈子は御木本伸吾との結婚を控え幸せの絶頂だったが、母の加奈江がトラックに轢かれる事故に遭い、人生が一変する。関東総合病院に搬送された加奈江は脳が破壊されているため、元通りの体になる確率は低い。家族の経済的負担を考え…

深谷忠記『札幌・仙台48秒の逆転』(光文社文庫)★★★

九月七日、函館空港から飛び立った丘珠空港行きの東西航空四八五便が駒ヶ岳の南東の山麓に墜落し、乗員乗客六十四名が死亡した。同日、函館で男が轢き逃げされ死亡し、東京から来ていた女性が消息を絶った。翌年の四月二十九日、函館郊外の山林で女性の白骨…

志茂田景樹『雨の倉敷 殺人紀行』(角川文庫)★★★☆

「クルスの壺を探して! 探さないと、わたしは殺される」とメッセージを残し、一之瀬みちが失踪した。養女(で姪)ローザの友人である彼女は亡くなった大富豪の石渡大介の愛人で、クルスの壺は石渡家に代々伝わる家宝だった。元警視庁捜査一課の刑事で健康食…

小杉健治『月村弁護士 逆転法廷』(徳間文庫)★★★★

昭和四十八年六月二十二日、静岡県藤枝市で大衆食堂『中井食堂』を営む中井英和、妻・芳子、長男・英一の三人が惨殺され、二ヶ月後に岡野保が逮捕された。昭和五十六年に死刑が確定し、翌五十七年十一月、冤罪事件支援団体『冤罪救済センター』は岡野の息子…

谷恒生『船に消えた女』(ノン・ノベル)★★★☆

横浜・本牧埠頭に娼婦の死体が浮かんだ。被害者は川崎港分港の船員酒場『オリオン』のホステス・長崎洋子、二十三歳。自宅で絞殺され、港に遺棄されたと思われる。船舶鑑定人・日高凶平は、彼女が事件の三日前の早朝に茶色い髪の大柄な女と一緒に星光丸に乗…

梶龍雄『大臣の殺人』(中公文庫)★★★☆

北海道で殺人を犯した岡田国蔵が、情婦の角田のぶと東京に逃げ込んだという。密命を受けた警視庁探偵・結城真吾は、元岡っ引の源三老人と弥七の力を借りて探索を開始した。北海道から帰港したばかりの尊神丸の松浦毅船長から話を聞くため乗船したが刺殺され…

深谷忠記『ゼロの誘拐』(徳間文庫)★★★★

進学塾「栄冠セミナー」に通う中学二年生の近藤美知江が帰宅中行方不明になり、三日後、多摩川の河川敷で遺体となって発見された。昨年、同様の手口の連続少女誘拐未遂及び殺人事件が起きており、警察は同一犯の犯行と断定。事件発生直後から栄冠セミナー院…

辻真先『迷犬ルパンの名推理』(光文社文庫)★★★☆

ユノキプロの中堅タレント・環みやが事故死した。彼女が病院で亡くなった時刻、ヤマト放送のラジオスタジオに彼女からの電話がかかってきていたことから、幽霊電話の話が業界で囁かれるようになった。それから一年後。警視庁捜査一課の刑事・朝日正義は、ユ…

赤川次郎『死体置場で夕食を』(徳間文庫)★★★☆

新婚の紺野洋一・芳子夫妻は新婚旅行の三日目、吹雪の山道で道に迷いロッジに辿り着く。主人の福原夫妻は二人を快く迎え入れてくれ、先客の六人(湯川、田代美津子、安西夫妻、太田夫妻)とも親しくなった。深夜二時頃目覚めた芳子は福原夫妻と太田夫妻がス…

西村京太郎『殺意の設計』(角川文庫)★★★★☆

三年前に新進の画家・田島幸平と結婚した麻里子の幸福な生活は、夫の浮気を密告する匿名の手紙で崩壊した。絵のモデルをしている桑原ユミとモーテルから出てくる所を目撃した彼女は、夫と共通の友人であり三年前に二人の前から姿を消し、今は仙台で実家の旅…

佐野洋『高すぎた代償』(徳間文庫)★★★★

火災保険会社の調査課員だった久世信は、事故死した元上司の未亡人・那須野治子が女将をしている連れ込み旅館『なすの』の居候(というかヒモ)。客室にマイクを仕掛けて会話を録音・収集して楽しんでいる彼は、ある日、「部長」と若い女性の奇妙な会話を聞…

小杉健治『裁かれる判事――越後出雲崎の女』(集英社文庫)★★★★

千葉地方裁判所松戸支部の判事・寺沢信秀は、担当事件の被告人の妻・岩田歌江に船橋の喫茶店『道』に呼び出された。判決に手心を加えるよう頼まれ、ホテルに誘われたがすんでのところで逃げる。駅前に戻った彼は赤いコートを着た女に声をかけられ、新小岩の…

清水一行『神は裁かない』(光文社文庫)★★★☆

松岡医院院長夫人で女医の柳子は、匿名の電話で夫の弘満がアパートを借りて浮気をしていると知る。そのアパートに向かった彼女はある室で夫がセミダブルベッドで寝ているのを目撃し、逃れるように飛び出した。翌朝、目覚めると、隣のベッドで弘満が絞殺され…

赤川次郎『華麗なる探偵たち』(徳間文庫)★★★☆

1984年3月刊。『SFアドベンチャー』に1982〜1984年にかけて発表された、鈴本芳子と第九号棟の住人たちが難事件を解決する「第九号棟シリーズ」第1弾(本書のみ短編集)。 「英雄たちの挨拶」(1982年9月号) 20歳の誕生日を迎えた私(鈴本芳子)は父の遺産4…

深谷忠記『阿蘇・雲仙逆転の殺人』(光文社文庫)★★★☆

伊良湖岬で左手首、御前崎で両手首・両足首が切断された女性の胴体、弓ヶ浜で右足首が発見された。検死で同一人物のものと断定され、被害者は博多に住む病院長夫人で資産家の伏見雪江と判明。雪江に三千万円の使途不明金があることが判明し、予備校〈英研ゼ…

深谷忠記『我が子を殺した男』(光文社文庫)★★★

第二短編集『男+女=殺人』(実業之日本社)からの4編に、書下ろしの表題作を収録した第四短篇集。 「欲と毒」(初出=『週刊小説』1996年12月6日号/『男+女=殺人』収録) 堂本満男は大須賀真由子とともに、妻・奈美と真由子の夫・健二を無理心中に見せか…

深谷忠記『信州・奥多摩殺人ライン』(光文社文庫)★★★

清新社の編集者・笹谷美緒は怪我をした同僚の代わりに、深夜、推理作家・荒木康之の運転する車で穂高町にある彼の別荘へ向かった。到着早々、2人は寝室で荒木の妻・智子の絞殺死体を発見する。9日後、奥多摩の山林でタレント養成学校の研究生・田村カオリが…

芦辺拓『ダブル・ミステリ 月琴亭の殺人/ノンシリアル・キラー』(東京創元社)★★★☆

大胆にして精緻、一世一代の大仕掛け これぞ職人芸――現代本格ミステリの精華 (帯の惹句より) 「月琴亭の殺人」 素人探偵にして刑事弁護士・森江春策は幻の映画「黄金夢幻城」の上映会に招待され、“日本のモン・サン・ミシェル”天眼峡に建つ《月琴亭ホテル…

千澤のり子『鵬藤高校天文部 君が見つけた星座』(原書房)★★★★☆

わたしが失った物 あなたがくれたもの ありがとう…… でも、わたしはひとつ、大きな嘘をついていた。 (帯の惹句) 千澤のり子嬢、6年ぶりの単著は『ジャーロ』に不定期掲載された連作を纏めた青春ミステリー連作集。全五話。「見えない流星群」(初出=『ジ…

芦辺拓『七人の探偵のための事件』(早川書房)★★★★☆

旧名鳴町、平成の大合併のあとは次萩市名鳴地区。統廃合で警察署がなくなったこの町で『人死に』が起こった。警察は何の捜査もせず、業を煮やした青年団員たちは大戸島佐市郎爺さんの助言で人死に慣れした探偵たちを雇うことにする。ところかわって東京・日…

芦辺拓『スクールガール・エクスプレス38』(YA! ENTERTAINMENT)★★★☆

海外体験と文化交流のボランティアのため、南シナ海に浮かぶ島国サルマナザール共和国へやってきた武蔵旭丘女子学園の生徒38人。第二の都市ゲロンバン・ブルマサラのホテルに滞在していた24人は銃声で目を覚まし、ジェプン・ジャバタン村に派遣されていた7人…

芦辺拓『金田一耕助VS明智小五郎』(角川文庫)★★★★☆

江戸川乱歩と横溝正史へのオマージュ作品、贋作(パスティーシュ)を集めた作品集。7篇収録。 今回は4篇のあらすじとメモ。残り3篇は後日。 「明智小五郎対金田一耕助」(初出=『明智小五郎対金田一耕助 名探偵博覧会II』) 昭和十二年。下関発東京行きの急…

芦辺拓『奇譚を売る店』(光文社)★★★★

“――また買ってしまった。”からはじまる六つの古書怪異譚を収録した、芦部先生初の怪奇幻想連作集(初の怪奇幻想短篇集と紹介しようと思っていましたが、『探偵と怪人のいるホテル』がありましたね)。全作発表時に読んでいましたが、こんなに薄い本になると…

芦辺拓『スクールガール・エクスプレス38』最終回

ラジャ・クイール村に向かう反乱軍。長老の号令の下、村の秘密兵器が火を噴く。一方、機関車《プリンス・オブ・バビラリー》と“赤トンボ”は、サルマナザール共和国の首都ベサール・セルンに近づきつつあった。少女たちは最後の作戦を決行する――。 大団円。最…

芦辺拓『スクールガール・エクスプレス38』第9回

森に停車した機関車《プリンス・オブ・バビラリー》 。そこで少女たちを待っていたのは――。 遂に全員集結(問題児3人組のことを忘れていたのは秘密)。大阪弁に驚いたが、よく考えてみると十分ありえることなんだよな。それにしても軌匡の登場・活用は盲点だ…